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「JA秋田おばこは、主食用米で1俵当たり500円、加工用米で300円の負担をそれぞれ求めることを想定。コメの集荷時、農家には県内他JAと同程度の仮渡し金を前払いした上で、実際の販売額との差額を支払う『精算』の際に負担額を差し引くことを検討している。追加払いが生じない場合などは、翌年産に負担額を繰り越す考え」
損失分担金の徴収時期が精算時点というのは、農家がコメを出荷してから2年後のことだ。農協経営陣は、その頃なら農家も忘れているとでも思っているのであろう。
農家に損失分担を肩代わりさせようとした反動は早くも出てきた。田植えの最中のことだ。5月19日付けの秋田さきがけ新報が伝えてきたJA秋田おばこの農協離れのレポートは衝撃的だった。
「関係者によると、18年産米の出荷契約の計画数量は前年比98%の131万3270俵。これに対し、5月18日午前までに集まった契約数量は115万9363俵だった。内訳は主食用が88万5986俵、加工用は27万3377俵。契約した農家は6276人で前年実績から610人減ったという」
農協は、販売量などを踏まえた販売計画を立て、それに沿って農家からコメをどれだけ集めるかを決める。その計画に基づき、春の田植え前のタイミングをとらえて農家との間で出荷契約を交わす。18年産の契約数量は、主食用米と加工用米を合わせた計画数量約131万俵に対し、約116万俵しか集まらなかった。計画数量比11.4%の減少だった。1俵も農協に出さない農家の数も前年実績の約1割もいた。
その時点で農家に求める「1俵300~500円」の損失分担は、まだ噂の段階だった。それでも数量ベース
で1割の減少となっている。これが正式決定後の出荷契約なら、減少幅はそれ以上に拡がったに違いない。JA秋田おばこに「終わりの始まり」を告げる号砲と思えなくもない。
おばこ管内は業者の草刈り場
留意すべきは、コメを集荷する県内13農協の中で、JA秋田おばこの生産者概算金のみが最低価格となることだ。9月11日付け秋田さきがけ新報が伝えた損失分担金500円を差し引いた「1万2600円前後」で打ち切りになる。こんな安い生産者概算金でJA秋田おばこが、ライバルの商人系業者を相手に契約数量の集荷を達成することができるかどうか。当面のポイントはここだ。
例年なら、商人系業者は、JA秋田おばこより千数百円ぐらい高く農家から集荷していた。18年産の「1万2600円前後」なら、その価格差は2000円前後になってしまう。最初から農協に勝ち目はない。5月時点での契約数量は計画数量比11.4%の減少だったが、いざ集荷の段階になってみると、数量がさらに落ち込むことは十分に考えられる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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