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こんなやりとりから数年後、彼はそれを実現するための一歩を踏み出すのだった。
オランダ人の合理性
18年6月、筆者はGPECでSimonに再会した。あのときの発言は思いつきではなく、埼玉県東松山市でOishimon オーガニックファームを立ち上げたということだった。日を改め、まだ暑さの残る9月中旬に当地へ向かった。
最寄りの東武東上線・東松山駅に彼は車で迎えに来てくれていた。シートに座ると車内にオランダの「ドロップ」という黒いグミがあり、1個もらって口に含んだ。あいかわらずおいしくはなかったが、とても懐かしい味だった。15分ほどで借地圃場に到着した。
2年前のSimonといえば、日本語がほとんどできず、英語で会話していた。今回は完璧な日本語が話せたため、学習法を尋ねると毎日話せばいいんだよとあっけらかんとした答えが返ってきた。現在、日本でのコミュニケーションやビジネスの交渉は全部日本語で実施しているという。
Simonが日本で農業に着手したのはじつは今年ではない。16年秋に大学を卒業するや否や、同年11月には日本の農業生産法人に就職し、農産物のマーケティングや営業に取り組んでいる。ただ、長くは続けず、自らの目的のために会社を辞め、件の東松山で独立した。場所については輸送の面で消費地の都内に近いことがポイントの一つだった。余談だが、この決断から2カ月後に妻の妊娠が判明しており、タイミングが逆であれば新規就農はなかったかもしれないと彼は笑った。
今年10月現在、所有地は一切なく、借地だけで3圃場計49?aを抱える。いずれも返却期限があり、借り入れ期間中に取得するか、新たな農地を探さなければならない。
「小さく始めて大きくしていこうとしているから、何も焦ってはいないよ。インターンシップのとき、日本で農業を始めるなら500万は必要だよとアドバイスを受けたんだよね。でも、実際は車込みで50万くらいでスタートできた。耕耘機は使いたいときに市の農業公社から借りられる。1haに達するまでは買わないかな。お金が貯まったら、それを元手にビニールハウスも建てる。自分で造れるものは造り、海外から仕入れたほうが安くて良ければそっちからにする。
オランダでは当たり前の土壌の生物性の分析もアメリカでやろうかと検討している。安価だしね。化学性を含めデータがわかれば堆肥の投入量も計算できるし、戦略が立てやすい。日本国内だけじゃなく、海外にまで視点を広げて探せば安くて良い資材や技術はいっぱいあるよ」
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