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特集

農業保険の最新動向~収入保険と民間の損害保険サービス~


玉置 そうでしょうね(笑)。補償内容としては、収入保険が断然有利だと思いますよ。あとは経済的な面でどう判断されるか、です。収入保険という新しい保険を選択するのか、掛け金がどうなるかという部分まで十分に検討いただいて、判断していただきたいです。

【民間損保会社も技術連携】

――収入保険の制度化に当たって、モデルになったものはありますか?
窪山 米国の収入保険(WFRP)ですね。税のしくみを使って収入を把握するとか、基準収入をどのように設定するかという部分は参考にさせてもらいました。ヨーロッパには農業共済のような収量保険はありますが、収入保険はないです。米国の収入保険を参考にしながら、日本ではどういうしくみで運用できるのかというところを、15~17年までの3年間で全国の1000経営体の協力を得て事業化調査をやりました。
――民間の損害保険会社の参入を検討する余地はあったのでしょうか?
窪山 事業化調査の際に、その調査事業を請け負ったのは農業共済組合だけでなく、民間の保険会社も手を挙げていました。けれども、成果物は出していただいたのですが、3年間の調査期間の1年だけで降りてしまいました。その理由は、農業現場の事情がよくわからなくて相当苦労されたということです。調査後にも、収入保険の制度設計について議論してもらうときにも民間の損害保険会社には来てもらいました。そこでは、「保険の実施主体として参入することは難しいのですが、民間の損害保険会社として持っている商品開発や推進のノウハウといった技術的な面では何かお手伝いできるかもしれません」という提案がありました。そういう経緯を経て、実施主体は全国農業共済組合連合会になりましたが、法律にも「サービス向上を図るため、全国農業共済組合連合会は民間保険会社と積極的に技術連携を図る」ということが書かれています。現に東京海上日動火災保険(株)から職員が出向して、加入推進や契約時のタブレット端末の使い方についてもアドバイスをしてもらっているという状況です。
――ほかにも園芸施設共済などは、民間の損害保険と類似しているのではないでしょうか?
玉置 はい。そのとおりです。全体は把握していませんけれども、民間の損害保険会社でも施設に対する保険商品を持っていらっしゃるところはあります。ですが、基本的には園芸施設共済のほうがシェアは大きいと思います。民間の損害保険会社は商品を作るときに持続的にその商品を運営できるかどうかという保険設計が行なわれます。契約者からの保険料で成立させるためには、園芸施設の被害率がどの程度なのかを計算した上で掛け金などが算出されますが、園芸施設共済の掛け金には基本的に国庫負担があります。現場の農業者の声を聞く限りでは、必ずしも民間の損保の加入率が高くなっているという状況には至っていないようです。

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