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【農業は先進国型産業になった!】
外国人実習生の現地ルポ 実態と課題と展望 第7回 実習生の新しいモデル誕生か 高賃金・高人材型への転換
- 評論家 叶芳和
- 第19回 2018年11月05日
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旭市は1母豚当たり出荷頭数が多い。配合飼料の低コスト入手という点では鹿児島県の鹿屋市などと大差はないが、農場生産性が高い点で競争力を持っている。もちろん、規模の利益の大小は別途ある。
【養豚は構造調整の優等生】
豚の飼養戸数は1960年には80万戸もあったが90年には4万戸に減り、現在は5000戸を切った。60年に比べ164分の1、90年比9分の1である(表3)。大規模養豚技術の進歩、豚肉の輸入自由化を背景に、激しい産地間競争が展開された結果である。70、80、90年代の養豚業の構造調整には敬服の他ない。
飼養規模が1~2頭の「軒先養豚」(副業的)といわれた時代から、今日の3000頭へ拡大した。その結果、国際競争力も向上し、輸入自由化があったものの、国内生産を維持している。豚肉の国内生産は90年154万t、2000年126万t、10年128万t、17年127万tと推移(ただし、関税障壁に守られている側面もある)。消費の増加分を輸入に依存しているため、国内自給率は緩やかに低下、現在49%である(自給率は1990年74%、2000年57%、17年49%)。
この構造調整は畜産業界のどこでも起きたが、養豚の構造調整のスピードは中位である。1990年から2017年にかけての飼養戸数の減少は、乳用牛は4分の1、肉用牛は5分の1、養豚は9分の1、採卵鶏は36分の1に減った。養鶏よりは緩やかだが、牛よりは急激だ。
一方で、技術力などの格差から産地間競争に優劣が生じ、養豚業の産地は上位集中度が上昇している。飼養頭数の上位3県への集中度は、1970年12%、81年17%、2000年28%、17年30%と上昇した。旭市はこの上位グループに入っている。
2 (有)東海ファームの事例-PRRS病克服、1母豚当たり出荷数23頭-
旭市の養豚業、(有)東海ファーム(高木敏行社長)は成長企業である。1972年、東庄町で母豚100頭一貫経営で創業、80年SPF豚一貫経営のため旭市に農場開設(母豚300頭)、98年母豚630頭に規模拡大、2007年母豚1030頭に規模拡大した。現在、年間出荷頭数は2万3000頭。地域の中核的農場である。
(注)SPFはSpecific Pathogen Freeの略字(特定病原体不在)。豚の健康に悪影響を与える特定の病原体を持っていないという意味。日本の豚肉の約1割はSPF豚と推定されている。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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