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こう書き並べると、不利な条件ばかりで考えるだけで暗くなるが、肝心なことを忘れていないだろうか。恵みをもたらす太陽も、作物生育に必要な降雨も、タダで使わせてもらっているということだ。タダのものに文句を言っても始まらないのである。災厄を受け入れるのは容易いことではないが、多少の気象災害は我慢しなければなるまい。何も投げやりで言っているのではない。薬剤、肥料、農機具が進歩した時代の農業経営者であれば、工夫を凝らして事前に備え、万が一災害に遭っても復興するべく努力できると私は思っている。
農産物の品質と売上高を担保するのは適期作業
先月は農業機械のコストの話をするはずが被災レポートに代わったことをお詫びする。改めて、農業機械のコストの話をしよう。
一般論だが、経営規模が大きくなればなるほど、適期作業が売上高に与える影響は大きくなる。その理由はシンプルで、適期に収穫することが収穫物の品質を担保し、高く売れるからだ。穀物でも、野菜であれ畜産物であれ、農産物には旬があり、収穫適期を失してしまうと価値は下がる。いまや消費者からはうまみや食感を、流通・小売サイドからは貯蔵性をそれぞれ求められるなか、両方のニーズに応える生産が求められる時代である。
多くの経営者はそのことを認識しながらも、予測の難しい天候に振り回されているのも事実である。地球規模の温暖化がささやかれて久しいが、数百年分のデータ検証が必要になることから、近年の異常気象を現時点では温暖化の影響とは言えないらしい。
そこで、年間降雨日数の変化を1890年代から10年ごとに平均してみることにした(表1)。100年以上前から降雨データの記録が気象台に残されている地点より全国7カ所を選んだ。たとえば札幌の数値を見ると、100年前に比べて明らかに降雨日数は20~25日程度増えている。地域によって差があるものの、2010年代は降雨日数が増えていることがわかる。今年は台風による爪跡が大きかったが、発生する数も日本列島に接近あるいは上陸する数も変わらないながら(図1)、災害をもたらす要因であり続けている。
なかでも土地利用型の農業はストレートに天候の影響を受けやすい。いくら排水性改善に努めても降雨量によっては圃場に入れなくなり、日照不足や低温で成長が進まず防除回数が増えたり、高温で品質が損なわれることもある。作業が計画通りに進められなくなり、そのことが収益を落とし、費用を増やす。ジワジワと現金や預貯金が消耗して資金繰りが悪化するのは、慢性疾患のような状態である。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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