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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

農業機械のコストの話(2)作業適期の幅と機械の選択


一方で野菜や花きなどの施設を利用する農業では、災害によって施設に被害が出ると、再建費用が経営の死活問題となる。一瞬にして財務状態が悪化し、継続する意思を削がれる。これは急性疾患に例えることができよう。
慢性疾患にせよ、急性疾患にせよ、ダメージを回避するためには、農業機械や施設の増強を図ることが、一つの防衛策である。今回は作業適期の幅と機械の選択という視点で考えてみることにしたい。

作業適期の考え方

作物によって作業適期の幅は異なるし、地勢や天候条件で大きく変わる。同じ作物でも作付時期をずらしたり、戦略的に品種を組み合わせたりすることで作業適期を広げることは可能である。しかし、限られた期間に作業を済ませないと取り返しのつかないダメージを被るのはいずれの作物でも共通する事項である。
作業適期を逸した場合に致命傷となるポイントと、回避するための機械の選択について、作物ごとに取り上げていこう。
まず水稲だが、北国の水田作業は播種(直播)や移植の遅れが登熟不良につながるので、春先の播種や移植で猛ダッシュできなければ、実りの季節にゴールできない。冬場に降雪のない地域では、合筆や整地、播種床準備の作業期間を設けられるので、数年後を見越した作業面積を想定した機械装備で十分である。しかし、冬場に降雪があったり、裏作で麦やジャガイモなどを作付けしたりする場合は、前作の収穫から水稲の播種・移植までの作業適期は数日の勝負となる。天候に振り回されずに作業を終えるためには、たとえば2m幅より3m幅の機械を選べば作業効率を1.5倍に上げられる。同じ作業幅でも、高速播種が可能な機種を選ぶのも手である。移植なら、8条あるいは10条植えの田植機の投入をしてでもリスクを回避する方策も考えられよう。
次に小麦は、収穫前の穂発芽など品質劣化のダメージが最大の致命傷となる。収穫適期に降雨に見舞われないよう収穫作業を終え、乾燥に入らなくてはならない。北海道で小麦収穫の数日間のために巨大なコンバインが導入されているのは、このリスクを回避するためにほかならない。地域で作業を共有するなど、各経営体の負担を軽減しつつ、限られた日数で品質低減を抑えて刈りきるための方策をとっている。防除とともに亜リン酸の葉面散布を行なうのも対策の一つであろう。コンバインの刈幅と乾燥機の容量にどの程度のゆとりを持たせるのか。本州では小麦の価格が下がっている状況と聞くが、将来を見据えた投資には慎重な検討が必要である。

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