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新・農業経営者ルポ

Life goes on. それでも地元で干しいもを作り続ける

農業経営は外部環境に左右される。自然条件、農地、水利、土質、地域の人間関係、景気、ライフスタイルの変化、流通の勢力図……。経営者は外部環境に不平を言っても始まらず、強さを磨き経営を持続させるべきだとされる。しかし、茨城県東海村の照沼勝浩氏は、原発事故による風評被害という不確実な環境に何度もさらされてきた。それでも新たな挑戦に取り組み、地元で干しいもを作り続けている。 文/松田恭子、写真提供/(株)照沼勝一商店

平成を通して拡大し続けた干しいも市場

干しいもは、サツマイモを蒸して乾燥させた伝統的な加工食品だ。サツマイモの生産量自体は、1970年には256万tあったが、75年までの5年間で、でん粉や飼料の用途減少により150万t未満に激減した。その後も減少の一途をたどり、2017年産は全国で80万7000tとなっている。
縮小するサツマイモ市場のなかで順調な消費を保っているのがアルコール用と加工食品用だ。アルコール用は、03年から始まった焼酎ブームにより主原料のサツマイモ消費量が突如として3倍以上に増加し、ブームが去った最近でも20万t前後の消費に落ち着いている。加工食品用は、85年から拡大し始め、現在では年間8万t前後の消費がある。
その加工食品のうち、ダントツの消費を誇るのが干しいもだ。93年に3万tだった消費量は、13年には4万5000tに増加し、菓子用途の2倍以上の量を占めている。昔からある素朴な伝統食品が平成を通して需要を伸ばし、商品1万t、約200億円の市場に成長した。

6次産業化による参入で競争激化

あまり知られていないことだが、干しいもの製造は静岡県の御前崎で江戸時代後期に始まり、明治時代に製法が茨城県那珂湊(現・ひたちなか市)に伝わった。1953年時点では、静岡県の生産量が7875tと全国一だったがその後減少し、55年からは茨城県が全国一となった。現在では、茨城県が干しいも総生産量の9割を占めており、静岡県は茨城県の1割未満、そのほか三重県、長崎県、鹿児島県、群馬県でわずかに生産されている。茨城県は干しいも王国であり、「干しいもと言えば茨城」と受け止められてきた。

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