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不安はあったが夢中だった。最初に手掛けたのは、自宅や小屋の屋根に設置した11kWのソーラーパネルだ。小規模ではあるが、次男と一緒に施工した思い出深い発電システムなのだという。
当初、農作物は売れないのだから農地は完全に発電所に転用しようと考えていた。しかし齋藤さんの農地は第1種である。どこに相談しても農地の転用は認められない。根本的な問題を抱えながらも、ひとまず太陽光発電を始めるために必要な経済産業省への申請や東北電力との契約、施設設計を進めていった。
「農地を転用できないなら、何か他の方法はないかと思って調べていたら、長島さんのホームページを見つけたんです。さっそく長島さんに会い、千葉県の実験場にも見学に行きました。そこで同じ志を持つ人たちに会うことができました」
こうして14年夏、ソーラーシェアリングと出会い、農地の一時転用として営農と発電事業を両立させるという道を進むことになった。会社勤めを続けながら、さっそく水田にソーラーパネルを設置する準備にとりかかった。
資金調達は難航した。福島県ではソーラーシェアリングの実績がなく、金融機関には成功すると思ってもらえなかったからである。サラリーマンとしての収入があったので、なんとか日本政策金融公庫から3300万円の融資を受けることができた。また、ソーラーシェアリングに3分の1補助する福島県の事業に採択された。16年3月には福島県の事業で49.5kW×1基が完成。同年6月には個人で着手していた49.5kW×3基と20.0kW×1基が完成した。
すでに13年11月にはKTSE合同会社を立ち上げていた。社名は川俣町のKと小神のK、東地内(とうじうち)のT、安全(セーフティ)のS、エナジーのE。川俣町東地内で安全な電力をつくって発信していくという思いが込められている。家族の理解も得て勤めていた会社を退職し、KTSE一本でやっていく覚悟を決めた。
【稲倒伏という失敗を経て農業に向き合う】
ソーラーシェアリングでは、作物が十分な日照を得るために、パネルによる遮光率を計算してパネル同士の間隔を空けて設置する。収量は、地域平均の8割以上と定められている。一方、効率的に発電するため、パネルは太陽の位置に合わせて自動で向きを変え、台風などで強風が吹くときは水平にしてダメージを防ぐ仕組みになっている。
「正直いうと、初めは発電を優先しました。地域にもよりますが、稲作で8割以上の収量を得るためには遮光率33%(当時の知見)ぐらいです。当初の設計では34~36%程度でしたが、田形造成を施した経緯のなかで、レイアウト変更を余儀なくされて約39%にしました。そのためか、初年度はコシヒカリが3分の1ぐらい倒伏してしまいました」
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