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江刺の稲

恥ずかしながら誤解していた

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第270回 2018年11月30日

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恥ずかしながら僕自身誤解していた。ソーラーシェアリングのことである。平成24年以来、農水省も営農体系としてソーラーシェアリングを評価しているのに。このところは水田の畑作化にばかり目が行き、ソーラーシェアリングでは規模拡大した土地利用型経営などできないだろうと決めてかかっていたのだ。
ある方の案内で、ソーラーシェアリングの技術開発を進めてきた長島彬さんの試験農場と、千葉県匝瑳(そうさ)市の椿茂雄さん、東光弘さんらが運営する匝瑳メガソーラーシェアリングの農場にお邪魔して驚かされた。
椿さん、東さんが経営する匝瑳ソーラーシェアリング合同会社の「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」は1カ所に3.2haという大規模な太陽光発電所であるとともに、発電パネルの下には麦、大豆などの畑作物を栽培している。軒高3m前後で支柱の間隔は約4m。トラクターや汎用コンバインもそこで作業している。
拝見したソーラーシェアリング圃場は敢えて厩肥も使わず、植物性の堆肥だけを利用するというこだわりの有機農業を実践しているために草の処理に手を焼いていそうだった。表土を削り取ってしまった痩せ地での栽培であることを考えればそれなりの収量は得られているように見えた。その模様は今月号の特集で紹介しているが、その様子を見て、慣行栽培で機械化を進めた生産も十分に可能だと思った。設備の強度を高めれば軒高も高められ、支柱間隔も10mくらいまでは広げられるという。長尺のブームスプレーヤーは不可で、あまり大型の機械は使えないかもしれないが、その分、売電による収入が得られる。設備投資にかかる費用は約3億円で、売電による収入は約4700万円。その半分は借金返済にかかり、約2300万円の売電収入が農産物生産以外に得られる。
匝瑳市の事例は全国でも最大の施設であるが、果樹や野菜類のほか水稲作での事例もある。想像しがちなソーラーパネルの日陰になって作物の生育に悪影響を与えるだろうという第一の先入観もパネルの面積を減らし、受光面を太陽に向ける可動式のパネルにすることで発電量は全面パネルの約半分になるが、植物に与えられる光量を十分に確保できるどころか過剰な日照を防ぎ、同時に作業負担も軽減されるという。詳しくは特集の長島さんの解説をご覧いただきたい。

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