ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

専業農家仲間の未来のために、集落営農をあえて担う

52歳で「引退」し、家族で裁量を分担。「人を雇う農業」を時代に託す

「私はもう引退したんですよ」松隈さんは笑う。もちろん「引退」は言葉のアヤ。実際は家族間で役割を分担し、従来すべてを管理していた松隈さんは一歩下がって、麦と大豆の担当になったのだ。 就農当初から苦楽を共にする夫人・信子さんにはブルーベリー園「トスベリーファーム」を任せている。高田町の4軒の専業農家で1600本。生食用、ジャム用、ジュース用、ケーキのトッピング用など用途に合わせた品種・クオリティのブルーベリーを栽培・販売する。

 後継者となる次男の裕己さんにはコメとジャガイモを任せた。

「私は52歳で引退するつもりでした。親父が亡くなった歳と同じです。それが今年なんです」 これも巡り合わせなのだろうか、くしくも裕己さんは23歳――松隈さんが亡き父から農業を受け継いだ歳だ。女の子をもうけ、奥さんの寿子さんも「農家のお嫁さん」として子育てをしながら農作業に携わる。

 水田担当の裕己さんは来年ゴボウにチャレンジする。これは彼自身の判断だ。

「ゴボウの天敵はセンチュウ。水田にはセンチュウはいません。また、阿蘇などの火山灰土壌には向いていないため、競争力があります。もう売り先は見つけたから、あとは作るだけだと本人は言ってます(笑)」 近々、鹿児島や熊本の産地へ成功事例、失敗事例を学びに出かける。こうした際のツテ探しについては、各地の生産者に顔の広い松隈さんがサポートを惜しまない。

「私の経営はあくまで私の世代のもの。家族労働の時代の経営です。次の世代は人を雇っていく時代になるんでしょうね。その時代に合った自分なりの農業、経営を確立していってほしい」 農業において最も大切にしていることは?

 その問いに松隈さんは自信に満ちた口調でこう答えた。

「仲間です。自分ひとりで大きくなっても、つまらない。まわりであれこれ騒ぐ人が多いほど、地域全体も盛り上がるし、個人としてのやりがいもある」 松隈家の農業から一歩身を引く。それは、もっと広い視野から地域を見渡し、盛り上げていこうという布石なのかもしれない。

関連記事

powered by weblio