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【土門「辛」聞】
トマト・ブームを煽って墓穴を掘ったカゴメ「農事業」の憂鬱
- 土門剛
- 第172回 2019年01月07日
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加太菜園は、和歌山市の企業団地「コスモパーク加太」に、カゴメ70%、リース最大手のオリックス30%の出資で、生食用トマト生産のブームが始まりかけた2004年10月に設立。当初の計画は、「温室規模20.1ha」「総事業費47億円(第1期~第3期)」。カゴメは「アジア最大規模のトマト菜園事業」と大風呂敷を広げたが、大赤字に腰を抜かしてしまい、第1期分を完成させただけ。計画そのものがズサンだったのだ。台風で被災したのは、その温室(5.1ha)だった。
カゴメは11月30日付けプレス・リリースで解散を次のように伝えた。
「(台風20号と台風21号により)ガラス温室全体及び生産設備に甚大な被害を受けたため操業を停止し、当社は加太菜園の事業再開および継続の可能性について、慎重に検討を重ねてまいりました。事業の再開に向けては多額の再投資と相当数の時間を要する為、その回収を見込むことが困難であることが判明したことなどから、今後の事業の再開は不可能と判断せざるを得ず、加太菜園を解散することと致しました」
そのプレス・リリースに「加太菜園の最近3年間の経営成績」が記載されていた。カゴメは連結対象の子会社や関連会社の4菜園についての主要損益情報を公表していたが、なぜか14年12月期の決算から非公表にした。公表をやめた理由は、4菜園の創業時点からの主要損益情報を並べた表(次ページ)をみれば、推察いただけよう。
メディアのカゴメ報道は、取材相手の言い分をそのまま反映しただけ。データの裏付けがないものが目立つ。カゴメの農事業が通期(17年12月期)で赤字に転落しても、12月19日付け日経ビジネスは、「トマト栽培を10年で黒字化、カゴメの未来工場」と書いてきた。書いたのは、あの吉田忠則記者だった。
カゴメは11月30日付けプレス・リリースで解散を次のように伝えた。
「(台風20号と台風21号により)ガラス温室全体及び生産設備に甚大な被害を受けたため操業を停止し、当社は加太菜園の事業再開および継続の可能性について、慎重に検討を重ねてまいりました。事業の再開に向けては多額の再投資と相当数の時間を要する為、その回収を見込むことが困難であることが判明したことなどから、今後の事業の再開は不可能と判断せざるを得ず、加太菜園を解散することと致しました」
そのプレス・リリースに「加太菜園の最近3年間の経営成績」が記載されていた。カゴメは連結対象の子会社や関連会社の4菜園についての主要損益情報を公表していたが、なぜか14年12月期の決算から非公表にした。公表をやめた理由は、4菜園の創業時点からの主要損益情報を並べた表(次ページ)をみれば、推察いただけよう。
直営2菜園は赤字のかたまり
メディアのカゴメ報道は、取材相手の言い分をそのまま反映しただけ。データの裏付けがないものが目立つ。カゴメの農事業が通期(17年12月期)で赤字に転落しても、12月19日付け日経ビジネスは、「トマト栽培を10年で黒字化、カゴメの未来工場」と書いてきた。書いたのは、あの吉田忠則記者だった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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