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石原の子息の良紀と和将は200 9年から実家で就農しており、錠次を含め担当者が一貫して対応する分業体制が敷かれている。オペレーターの頭数がそろっているとはいえ、工程がかさんでは全体に影響が出る。その一つが馬鈴薯のナストビハムシの防除だが、石原はこのインファローで同時に対処することで省力化を図っていた。
「ナストビハムシは塊茎に食害痕を残すものなんだけど、疫病の防除よりタイミングが早いんだよね。だから、まだ終わっていない播種作業の手をいったん止めないといけなかった。そこに登場したのがインファローなんだけど、適用害虫がアブラムシ類の殺虫剤を混用することで、じつはナストビハムシにも効いているんだよね。一石二鳥ってわけだ」
現状、その殺虫剤にはナストビハムシに対する登録はないが、「散布」という方法では適用になっている。これを応用して使っているというわけだ。
件のインファローセミナーでは、専用の作業機や農薬が高価だとしてしきりに費用対効果への質問が飛んでいた。その点、石原は厳密な計算まではしていないと前置きしつつも、確認していた選外品の減少率などを示しながら聴衆に理解を促していた。
報恩、そして次世代へ
石原には事業を継続してきたなかで何人もの恩人がいる。
そのうちの一人の社長には商売のノウハウから資金面まで応援してもらった。それまで100%、農協の面倒になっていた人間が商系業者と取引して真っ先にぶち当たる壁は資金繰りだろう。貯蔵して小出ししていく馬鈴薯はカネになるまで時間がかかる。よほど内部留保があればやりくり可能かもしれないが、石原の場合、生食用馬鈴薯に切り替えてしばらくは火の車だった。そんなとき、年内に前精算して全額入金してくれたのがその社長だった。また、値決めについても初めてだと市場価格を見ながら適当になりがちだが、取引先に提示価格の根拠が示せるよう生産費をベースにした手法を伝授してもらった。
業務上では選果委託先である町外の業者の世話になっている。ここでは空洞センサーを所有しており、男爵薯ではとくに発生しやすいとされる中心空洞を機械的に弾くことができる。取引先からの要望だったが、自前で用意するとなれば1000万円以上かかってしまう。生食用産地の農協であればいまや当たり前の機械も、個人では厳しく、そもそも費用対効果以前の話だ。これによって取引先から喜ばれたことは言うまでもない。
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石原新太郎 イシハラシンタロウ
代表取締役
(有)石原農場
1957年、北海道女満別町(現・大空町)生まれ。高校卒業後、就農。26歳で経営者になる。2001年、(有)石原農場を設立し、代表取締役に就く。現在の経営面積は約130haで、秋小麦を43ha、春小麦を17ha、馬鈴薯を35.4ha、てん菜を24.5ha、小豆を6.8haと作付けする。身内以外の従業員はおらず、石原の弟、子息2人、妻の計5人で構成している。年商1億5,000万円(2017年)。
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