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特集

平成の日本農業 明日のために振り返る


大泉 私は政策的にはアベノミクス農政、「攻めの農林水産業」に期待しています。ただ、課題は何かと言えば、第一に、過渡期なだけにまだ矛盾した政策があること、第二に、細々としたアジェンダ(行動計画)設定に間違っているところが結構あることです。後者で言えば、例えば法人経営の増加というのも、経営者の増加ではなく、集落営農組織みたいな法人の増加なんですね。本来は経営者の増加、経営環境の整備を大目標にしないといけない。世代交代の意味も、農業という特殊な産業を担うのではなく、地域ビジネスとしての農業や食品産業に変えられるような経営者に世代交代していくことに目標があるんだと思うんです。
昆 山口市が農業アドバイザーの浅川芳裕君と一緒になって地域農業の再生を手がけているんですが、集落営農が高齢化で破綻に向かおうとしている。能力のある経営者がいる集落営農でも、年齢が80歳だったりします。
大泉 たいてい10年持たない。
昆 山口市では受け皿として秋川牧園があったり、小さな畜産業者もいるわけです。それと市役所の意欲的な職員が、今までなら農水省が決めた通りにやって予算を消化するだけだったのが、危機感を持って動き出すと変化が起きる。3年かかったそうだけど小規模農家たちも再生計画に乗ってくるわけです。集落営農の経営破綻は地元にとってインパクトが大きいから、その再生手段としての子実トウモロコシや付加価値を付けられるような畜産業者、あるいは商品生産者がいたりすると、そこで大きな変化が起きるのでないかと期待しています。
大泉 それこそフードバリューチェーン作りのネクストステージですね。事業拡大のためにはフードバリューチェーン全体を見た農業をする。その最初はマーケットインと他事業者とのアライアンスです。ですが、次のステージは自らの経営価値を増加させること、経営手腕の活用を増加させることだと話しました。経営には承継や事業再生やM&Aが必ず伴うんです。
そして経営価値の増大は資産価値の増加だから、自分たちのバランスシートで言えば左側をどれだけ拡大するかという話になってくる。集落営農の破綻と再生は、まさに価値増加の流れのなかに入ってくる課題なんですね。
昆 集落営農では数百ha規模の農地が集約されることも珍しくない。それが破綻することによって、本当に現場発の地域農業と農政のパラダイム転換ができるかもしれないという可能性も感じますね。それと、ますます農業経営の多様性が広がる時代になってきましたね。

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