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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第1回 日本固有種「甲州」を先頭にワイン輸出産業化めざす 中央葡萄酒株式会社(山梨県甲州市)

「甲州で世界市場へ進出する」ことを社是とする中央葡萄酒の三澤社長は、欧州市場を開拓したイノベーターだ。国内では「日本ワイン」表示の制度化が国産ブドウの供給を増やし、ワインは成長産業への基盤が成立した。
本連載では、ソムリエ型解説ではなく、産業論としてのワイン論を試みる。


1 日本固有種「甲州」ブーム

ワイン新時代の到来か。現在は第7次ワインブーム(2012年~)といわれるが、特に「日本ワイン」の人気が高まっている(“国産ワイン”ではなく、日本ワイン)。なかでも、日本固有品種「甲州」が脚光を浴びている。
従来、日本国内で製造されるワインの多くは、南米チリやフランスなどからブドウ果汁を輸入しその濃縮還元を原料に使っていた。これに対し、国内産のブドウだけを使い、国内で醸造したものを「日本ワイン」という。輸入原料が混ざっているものは「国産ワイン」とはいっても、「日本ワイン」と称することはできない。こうした表示規制が昨年10月30日から実施された。(国税庁調査によると、現状は日本ワイン19%、国産ワイン81%である。16年現在)
図1に見るように、日本ワインはこの数年、二桁の高い伸びを見せている。ワイン全体の伸び率は5%程度であるから、日本ワインの高成長が分かろう。なお、輸入ワインを含めて国内で流通するワインに占める日本ワインのシェアは約5%である。
「本物」志向は、輸入自由化、国際化という潮流の中で、食品産業全般の動きである。清酒は10年から17年にかけて、アルコール添加の普通酒は22%も減ったが、純米酒は38%も増え、シェアは21%に上昇した。純米酒は輸出も伸びている(2万kl。7年で70%増)。
ワインブームのもうひとつの背景は、日本ワインの“輸出”だ。日本は長年、ワインの輸入国である。ところが、最近、国内製造ワインの輸出が伸び始めた。ワインの輸入大国から輸出国への転換の期待も大きい。この輸出をリードしているのが日本固有種「甲州」で造った日本ワインである(甲州種は白ワイン)。日本の醸造技術は高く、近年、清酒もウイスキーも輸出が伸びている。ウイスキーは原液不足のため、販売中止の銘柄が続出するくらいだ。「ワインも」と、期待する見方が出ている。
日本ワインの原料となるブドウの品種は多様で、欧州系、米国系、日本交配品種があるが(注、欧州系品種であっても日本国内で栽培されたブドウであれば、「日本ワイン」を名乗れる)、いま、脚光を浴びているのは日本固有の品種「甲州」である。甲州種は古くから日本に伝わってきており、日本のオリジナリティがある。(「甲州」の起源については奈良時代718年大善寺説と1186年説の2説があるが、DNA解析によって欧州系と判明しており、中央アジアのコーカサス地方からシルクロードを通じて伝来したとされる)。この甲州を使ったワイン造りが本格化したのは明治初期の文明開化期、1870年代といわれる。

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