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土門「辛」聞

フランス食文化紀行―伝説の料理人がフードコートに甦った


前菜に注文したのは、ブルゴーニュ名産のエスカルゴだった。正式名称は、escargot de vignes、ブドウ園のカタツムリと呼ぶそうだ。たこ焼き器のような陶器製の器に円形のくぼみに調理したエスカルゴを盛り付けるのが一般的だが、ここではパイ生地で作った逆円錐形のカップに盛り付けてきた。魚は、ニシンの燻製を注文した。メインは、ブルゴーニュ定番の牛肉のワイン煮込み。どれも和食のテーストをきかせた新しいスタイルのフランス料理だった。
フランス料理店には珍しいオープンキッチン。水曜日というのに、ほぼ7割の入り。いずれ芽は育つと思った。
彼らがここに店を構えた理由は聞きそびれた。一旗揚げるには、世界に名の知れたワインの銘醸地はうってつけと思ったに違いない。
ワイン・ツーリズムの便乗組と思った。ブドウ畑の眺望を楽しんで、ドメーヌめぐり、夜は素敵なレストランで食事が組み込まれたツアーのことだ。ドメーヌとは、自分の畑で収穫したブドウだけで醸造、瓶詰めする生産者のこと。ボルドーではシャトーと呼ぶ。
シャブリ村はパリから160kmぐらい。日帰り圏だ。ドメーヌめぐりや、レストランで食事を楽しんで、ワインをダース単位で持ち帰る。ワインの銘醸地では、車のトランクにワインを大量に積み込む光景をよく見かける。
確かに村の人口の割にはレストランの数は多い。トリップアドバイザーは15軒をリストアップしていた。1軒当たり人口146人という割合になる。観光客が多いことの証ではないか。
シャブリのミステリーは、15軒もレストランがあるのに、ミシュランの☆マークのついたレストランがないことだ。ちなみに☆マークなしは2軒しか紹介されていない。ちょっと寂しい気がする。
もちろん「Les Trois Bourgeons」の名前はないが、2軒のうち1軒は日本人がオーナーシェフの一人として共同経営に加わった『Au Fil du Zinc』だった。こちらは14年の開業。共同経営の片割れは永浜良さん。辻グループの専門学校出身、フランスでの見習い経験は、フランス料理のオーナーシェフになる定番コースのようだ。永浜さんは、辻グループのホームページに、シャブリでレストランを開いた感想を次のように述べていた。
「正直なところ、お店を始めるまで、シャブリという場所にここまでのポテンシャルがあるとは思っていませんでした。私達のお店はメインストリートに面していないし、決して小さいとは言えない面積のお店なので、すごく不安でした。でも、いざオープンしてみると、沢山のお客様が来てくださった。そして、今も変わらず、沢山のお客様が来てくださるので安心しています。ワイン生産者とその家族、関係者が多いです。まずは生産者が来て、気に入ってくれたら家族や友人、自分のお客にお店の話をしてくれて、さらにそこからシャブリ近郊の町へと評判が広がるという具合です」

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