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Opinion

ジャガイモシロシストセンチュウとイギリスでの対策

2015年8月、日本では初めてジャガイモシロシストセンチュウ(以下、Gp)が北海道網走市で発見された。D-D剤での土壌消毒と対抗植物のポテモンなどの植栽で根絶を目指してきたが、昨年12月14日に開催された第7回ジャガイモシロシストセンチュウ対策会議で河川近傍(500m以内)の圃場ではD-D剤から殺線虫粒剤(ネマトリンエース粒剤/ホスチアゼート、ネマキック粒剤/イミシアホスなど)での防除に変更になった。
イギリスは長年、ジャガイモシストセンチュウ類(以下、PCN)と格闘している。00~16年に生食用馬鈴薯圃場で土壌サンプリング調査を行なったところ、約半数がPCNに感染していることがわかった。分類すると、ジャガイモシストセンチュウ(以下、Gr)を含む圃場は2%だったが、98%の圃場ではGpを含んでいた。これは、Grの管理方法が確立した一方、Gpの対策が不十分だといえる。ちなみに、Grが抑え込めると代わりにGpが増える実態がある。そのような背景からイギリスではPCNに関連するさまざまな研究を進めている。今回、イギリスAHDB(Agriculture and Horticulture Development Board/英国農業園芸開発公社)のKnowledge Exchange Potato(馬鈴薯に関する知識交換)担当者に日本の状況を伝え、意見を聞いた(以下、談)。

殺線虫剤での管理方法

殺線虫剤は適切な方法を守ると効果的だが、誤用すると環境に影響を与える可能性がある。1回の灌注で60~90%有効だが、それですべてのPCNが死滅するわけではなく、生き残ったものがいずれ馬鈴薯の根に侵入する。そのため、殺線虫剤のみに頼ってはいけない。
網走市周辺は黒あし病も以前より発生していると聞く。イギリスに興味深い研究がある。殺線虫剤が土壌中の有機体や善玉センチュウまでも殺してしまうため、黒あし病に感染する可能性が高くなるというものだ。最大の効果と最小限の地下水汚染や大気汚染のため、殺線虫剤の施用に関する研究も長年行なわれている。
イギリスを含むヨーロッパでは、08年よりD-D剤を含むほとんどの土壌燻蒸剤の使用が承認されていないため、現在はオキサミルとホスチアゼートを使用している。これらは顆粒状の殺線虫剤(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)で、揮発性が低く、土壌密封を必要としないため、非燻蒸剤に分類される。イギリスで入手可能なものは、DuPont(R)のVydate 10G(R)(オキサミル10%)、Syngenta(R)のNemathorin(R)(ホスチアゼート10%)、CertisのMocap 15G(エトプロホス15%)になる。ホスチアゼートとエトプロホスは有機リン酸エステルで有機物と結合しやすいため、有機農産物圃場ではオキサミルの選択が効果的だといえる。

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