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Opinion

ジャガイモシロシストセンチュウとイギリスでの対策


(2)新しい栽培管理方法
オランダで使用されている「洪水」技術は、実施期間が短い場合は水を介してシストがまん延する恐れがあるため、注意が必要だ。少なくとも数週間は浸水しなければならない。
また、PCNによる塊茎の損傷を抑えるため、適切な時期に適切な量の水と栄養(リン)を施肥する方法も注目されている。これは安価で通常の作業に組み込みやすいという利点がある一方で、時間と労力がかかり、効果の測定が難しい。
(3)バイオ薫蒸
生物から発生するガスで薫蒸する。一般的なものはグルコシノレートとして知られるアブラナ科の作物を夏から秋にかけて10~14週間栽培し、バイオ燻蒸の細胞をふやけさせて感染圃場に浸透させることが大切だ。フレールモアーを使うことも有用だ。また、生成されたバイオ燻蒸は残留性がないため、耕土作業機などですぐに深度300mmまで土壌に取り込んだほうが好ましい。また、土壌に確実に混ぜ込むために時速3~4km以下のスピードで作業することが重要だ。バイオ薫蒸剤を効果的に使用するためには、窒素肥料を50~100kg/ha施用し、土壌含水量を圃場容量の50~75%、地温は10℃以上になることが重要だ。バイオ薫蒸は複雑な管理や専門知識を要するため、イギリスでも定期的に使用している生産者はほとんどいないが、最適な方法を遵守すれば施用ごとに最大で80%の効果が得られるため、今後期待できる管理方法の一つだといえる。
(4)線虫捕食菌・バクテリア
センチュウに寄生する菌はPCNの菌密度を減少させることがわかった。アルブス性菌根菌、ポコニアクラミドスポリア(Pochonia chlamydosporium)、Purpurocillium lilacinumが知られている。Pasteuria penetrans(バスツリア)もPCN管理のために研究者の注目を集めている。それ以外にもPCNへの競合剤で使用できる可能性がある真菌の研究が進められている。ちなみに、1回の施用で効果は40~60%が見込めるが、まだ市販されていない。

土壌サンプリング

管理方法の組み合わせのほか、戦略が重要になる。この戦略には短期的な目標達成の方策“Tactic”と少し先を見据えた戦略“Strategy”がある。Tacticは「次の馬鈴薯の栽培時にすることは何か」、Strategyは「輪作中にモニタリングしてわかった菌密度の傾向に対し、現在対処している管理方法の効果と次にすることは何か」といったようなことだ。このStrategyを決定するためには、輪作の長さ、品種の選択、殺線虫剤の使用などの関連性と、個別の圃場でのPCNの増殖率や減少率を把握する必要があるため、土壌サンプリングは重要になる。

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