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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第2回 甲州ワインの価値を高めワイン産地勝沼を守る 勝沼醸造株式会社(山梨県甲州市)
- 評論家 叶芳和
- 第22回 2019年02月28日
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日本ワインは原料制約から成長できないという見方は実証できない。
1 ワインのメッカ勝沼
日本にはワイナリーが約280ある。そのうち81は山梨県にある(国税庁調査)。さらにそのうち32醸造所が勝沼地区(甲州市旧勝沼町)に立地している。人口8000人の町に、ワイナリーが32(2016年現在)。この密度の高さが、勝沼がいかにワイン造りに適した地であるかを物語っている。
勝沼は、甲府盆地の一角にあり(東端)、扇状地や川が作った起伏のある土地である。地形は山の南面に傾斜しており、水はけがよく、積算日照時間が長く(山梨は全国1位)、昼夜の気温差も大きいため、ブドウ栽培に適している。実際、山裾に広がるブドウ畑と町並みの景観が勝沼の風景である。「日本一のぶどう郷」といわれている。
また、ブドウの発祥の地は、甲州種の起源が奈良時代説にせよ1186年説にせよ、勝沼である。明治時代、文明開化とともにワイン造りが本格化したが、その地も勝沼である(注、日本最初のワイン醸造は400年前に遡る。本誌前号拙稿参照)。
こうした歴史と景観を背景に、勝沼は観光地になっている。観光ブドウ園がたくさんあり、ワイナリーツアーも賑わっている。秋の収穫期には土・日曜になると、ブドウ園の細い道でも観光客が何十人にもなる。ワイナリーにはテイスティングを楽しむ観光客が各社1日200人くらい訪れる。
ワイナリーは小規模が多いのは世界共通である。山梨県ワイナリー産業は、大手資本2社、中堅10社、小規模70社からなる。マンズワイン(キッコーマングループ)、サントリーワインインターナショナルが2大ワイナリーで、主に外国産原料を処理してきた。中堅グループは地元資本が多く、勝沼醸造、中央葡萄酒、丸藤葡萄酒、シャトーメルシャン(キリングループ)など、国産ブドウを使用する日本ワインを主に生産している。これらが勝沼に集中立地していた。
ただし、この構造はいま急速に変化し始めている。大手資本が北杜市や南アルプス市に自社畑を開設する動きが多く、メッカ勝沼のシェアは低下方向にある。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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