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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ウクライナ 90年代のヘンプ復活を支えた食用品種USO-31を育種した国

ウクライナは肥沃な黒土(チェルノーゼム)の平坦な丘陵地が広がり、昔から農業が盛んな国である。国土面積は日本の約1.6倍、人口は約4500万人。いつの時代からヘンプの産地になったのかは定かではないが、17世紀のロシア・ツァーリ国、18世紀のロシア帝国、19~20世紀のソビエト連邦で収穫されたヘンプは、良質な繊維がとれることで知られていたようだ。
ヨーロッパ諸国の需要の80%を占め、1720年の栽培面積は全ロシアで約70万haだったという。なかでもヨーロッパとアジアの間にある黒海に面しているウクライナ地域はヘンプの主産地だった。
ヘンプは当時の帆船の帆布やロープなどの索具に欠かせない軍需品で、戦争の原因の一つにもなったと言われている。フランスの皇帝ナポレオンは、イギリス海軍が輸入していたロシア産ヘンプ繊維の供給を断つために、1800年初頭にロシアへ軍隊を派遣したものの、ロシアの厳しい寒さのために敗退したことはよく知られている話である。

約90年の歴史を持つ世界有数の研究拠点

ソビエト連邦の時代には、コルホーズ(集団農場)において100~150ha単位でヘンプ栽培が奨励されていた。当時の連邦政府は、1931年にヘンプの栽培および加工の技術的課題を解決するために、ウクライナ北部の町グルホフに研究組織を設置した。これが後のウクライナ国立農業科学アカデミー靭皮繊維作物研究所だ。おもにヘンプとフラックス(亜麻)の育種、栽培、収穫、加工などの包括的な研究拠点として、この分野を世界的にリードする存在である。研究所からの技術支援を受けて、ウクライナのヘンプ作付面積は、50年の1万5000haから60年には10万ha近くまで増えた(図1)。

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