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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ウクライナ 90年代のヘンプ復活を支えた食用品種USO-31を育種した国


この研究所では特に育種研究が盛んで、地道な交雑と選抜を繰り返すことで二つの成果を出している。ヘンプは、通常、雄株と雌株のある雌雄異株である。このタイプでは、当時の地方品種で繊維含有率が10%程度のものを30%にまで高めた高繊維含有品種を創り出した。もう一つは、種子収穫の機械化に適した品種の開発である。雌雄異株だと、雄株と雌株が50対50の割合で存在するため、半分の雌株にしか種子が着かない。そこで、50年代に発見されたドイツの雌雄同株を育成し、すべての株に種子を実らせ、コンバインで効率的に収穫できる品種を生み出した。
また、マリファナの主成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)がイスラエルのヘブライ大学で64年に発見されると、72年にTHC濃度の低い品種の研究をスタートさせた。その結果、生育期間110日の種子が実る早生タイプで、THC濃度が0.03%程度の雌雄同株の「USO―31」の開発にこぎ着けた。この品種は87年に登録され、欧州連合(EU)とカナダで90年代に本格的にヘンプ栽培が復活したときに、それぞれの地域で品種登録され、食品(種子)用の品種として広く栽培されることとなった。
冷戦時代に東側陣営に属した旧・社会主義国では、61年の麻薬に関する単一条約の影響を受けずに、大麻の研究と栽培が継続できたことが大きく影響している。品種の重要性はどの作物に通じる話だが、EUやカナダのヘンプ栽培復活の陰にウクライナの育種技術とソ連の政策があったのだ。ソ連崩壊後、同研究所は91年に独立したウクライナの研究所となり、研究活動が続けられている。
ウクライナでは、2000年に麻薬、向精神物質および前駆物質の法律でTHC濃度が0.15%未満の植物は、産業用ヘンプとして規制対象外になった。THC濃度による基準としては、EUの0.2%未満、カナダの0.3%未満より厳しいが、その基準に見合った育種が行なわれている(表1)。なお、15年より新しいヘンプ産業の中心地となった中国黒龍江省とカナダ・アルバータ州と共同研究を進めている。

国家戦略の支援なく低迷続くヘンプ栽培

世界をリードする研究とは対照的に、70年以降は化学繊維への代替が進展し、急速に作付面積を減らしていった。また、ソ連解体に伴う経済的な混乱は、ヘンプ産業の技術革新の体力を奪い、今日までの長期に渡る衰退を余儀なくされている。

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