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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ウクライナ 90年代のヘンプ復活を支えた食用品種USO-31を育種した国


このような状況の中でも再生への胎動を感じつつある。女性起業家のオクサナ・デボ氏が、親戚が経営していたヘンプ茎から繊維とオガラ(麻幹)を分離する一次加工場を買収し、2013年にテキスタイルと寝具のブランド「デボホーム(Devohome)」を立ち上げたのだ。ウクライナ産ヘンプ繊維を使った枕、布団、毛布、シーツ、クッション、タオルが商品化されている(図2)。積極的に展示会への出展を進め、大型店への納品、家具メーカーのショールーム常設展示、靴ブランドとの共同商品などを次々に手掛けて、市場拡大に積極的だ。
また、前述の研究所の出身者が中心となって17年に立ち上げたヘンプテクノ社では、トレーラーで運べるぐらい小型のヘンプ繊維処理システムを販売している(図3)。ヘンプの茎を1時間当たり約450kg処理でき、オガラ率5%しかないヘンプ繊維を取り出すことができる。世界的なヘンプ産業の盛り上がりに対応し、研究所で長年取り組んでいた研究テーマをビジネスチャンスと見て、企業化した事例である。
さらに、16年からHempireUA社が、石灰とオガラを利用したヘンプ建築事業を創業した。外資系では、米国のカンナビス投資会社のC21インベストメンツ社が、18年秋にウクライナ保健省から初めてCBD(カンナビジオール)の製造ライセンスを付与され、栽培免許を申請している。
これらの新しい動きが出てきたものの、ヘンプ産業に関する国家戦略がないことやTHC濃度の厳しい基準が国際競争では不利な情勢を強いている。かつての良質なヘンプ産地が誇った威厳を取り戻すための方策は、歴史ある研究所の膨大な研究成果の活用に託されているように思う。

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