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山道弘敬の本質から目を逸らすな

産業の健全な育成のために必要な施策の中心はICT農業では断固ない


この点でホクレンなどの上位組織は極めて浅薄な態度を取り続けてきた。市場流通は量の確保という点では非常に無責任な流通体制であり、市場へは送りたい分だけを送り、市場側も送られた分だけを取り扱うという安易な仕組みである。経済の側面で考えれば、労働者の給料が明日をも知れぬ状態であれば、みな安心して暮らせる道理もなく、ある程度の計画性のなかで、安定した経済成長を目指すことが基本になる。そのため、天候に左右されやすい農業といえども、経済社会に貢献する点では、量の安定供給という立場が最も大事な側面であるはずである。ところが、日本の食料供給体制では、このような量の確保についての課題を海外に求めて安心しきってきたがために、国内での安定確保という課題を絶えず置き去りにしてきた。結果として、加工産業の育成は一向に進まず、農業も繁栄を享受できない情けないところに落ち着いてしまわざるを得ない。
カルビーの故・松尾雅彦氏は、「ジャガイモ(加工)で以って、北海道経済を良くしよう」と常々おっしゃっていた。農業での加工産業の重要性をよく理解されていた数少ない方で、惜しい方を亡くしたとたいへん残念でならない。
本質的な課題に立ち向かわなければ、繁栄などないのは当然である。いま話題の農業ICT技術であっても、農産物の質量の安定確保に貢献する以上のものではない。それを消費に関連させる加工産業の育成なくして、供給過剰の前に価格暴落と離散という結末を繰り返すしかない。
世界最大の馬鈴薯生産会社であるR・D・オファット社の創業者は、自分の半生を振り返り、自分がここまで大きくなれたのは(注:1社で3万haを耕す)、春の植え付け時に売り先の決まっていない作物を植えない方針を守り続けてきた結果であると説明している。当たり前の話であるが、売り先の決まっていない農業では、ICT技術であっても手の施しようがないことを農業関係者は深く自覚すべきである。

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