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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第3回 イノベーションで先導し 産地発展の礎を築いた シャトー・メルシャン(山梨県甲州市)
- 評論家 叶芳和
- 第23回 2019年03月29日
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シャトー・メルシャンは日本ワインの発展を見越し、18年9月、長野県塩尻市桔梗ヶ原に新ワイナリー、今年秋には長野県上田市に椀子(マリコ)ワイナリーをオープン予定である。勝沼、桔梗ヶ原(ガレージワイナリー)、椀子(ブティックワイナリー)の3ワイナリー体制である。松尾工場長によると、「日本のワインの品質を世界に知らしめる産地を目指している」。生産規模は、勝沼ワイナリーは年産60万本、桔梗ヶ原は約2万本、椀子は約6万本で、それぞれ役割がある。
(注)ワインの種類は多様である。メルシャンは自社製品のカテゴリーを、「アイコン」Icon、「テロワール」Terroir、「クオリティ」Qualityの3つのシリーズに分けている。「アイコン」は最高級ワインで1本(750ミリリットル)、赤1万円以上、白5000~6000円。「テロワール」は産地の個性を表現するワインで、赤5000~8000円、白3000~5000円。「クオリティ」はスタンダード品で、1800~1900円である。
桔梗ヶ原と椀子はワイナリーのある産地の最高のブドウを中心に(アイコン、テロワール主体)、勝沼ワイナリーはアイコン、テロワール、クオリティの全シリーズを担う。椀子ヴィンヤードのブドウ(開園は03年)は現在、全量を勝沼ワイナリーに運んでいるが、今秋に椀子ワイナリーがオープンすれば、最高品質のブドウは同産地で醸造されることになる。
各産地は、すでに銘醸地としての知名度は高い。「桔梗ヶ原メルロー1985」は日本ワインとして初めて国際ワインコンクールで大金賞を受賞(リュブリアーナ国際ワインコンクール、開催地セルビア国)。「同1986」も大金賞を受賞、その後も87年、92年、97年、99年産と金賞が続いた。塩尻市桔梗ヶ原はメルローの世界的銘醸地としての名声を得ている。
椀子ヴィンヤードは03年から造成・植栽が始まった新しい産地であるが、10年の発売直後から高い評価を受け、12年には09年産赤ワインが日本ワインコンクールで金賞受賞、13年にはヴィナリ国際ワインコンクールで「メルロー2009」が金賞、また米国ワイン専門誌「ワインスペクテイター」で「オムニス2009」が90点の高得点、15年にはリュブリアーナで「メルロー2012」が金賞、16年にはIWCで「シャルドネ2014」が金賞を受賞した。
勝沼地区の城の平は、01年リュブリアーナで「カベルネ・ソーヴィニヨン1996」「同1997」が金賞受賞をはじめ、世界的銘醸地としての名声を得ている。日本ワインは世界の銘醸ワインに肩を並べていると言えよう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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