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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第3回 イノベーションで先導し 産地発展の礎を築いた シャトー・メルシャン(山梨県甲州市)


松尾工場長は「海外でたくさんの賞をいただいていますが、まだ十分な本数に足りていない。27年までに76haの植栽を目指しており、これらのブドウが育ち、良質のブドウが実るようになれば、広く世界の人々にも楽しんでいただけるようになります。そうなって初めて、日本ワインの良さを世界に伝えることができると思います」。
筆者コメント:シャトー・メルシャンの自社管理畑のブドウはメルローやシャルドネなど欧州系品種ばかりである。欧州系でありながら、数々の国際コンクールで金賞を受賞しているのは、品質が国際水準にあることを示している。しかし、日本のワインは価格が高いように思う。今後は、規模の利益の追求など、コストダウン努力も必要なのではないか。

3 イノベーション先導

メルシャンは大手の強みを発揮して、新技術を次々と開発、その技術を公開し産地発展に貢献してきた。
ワインの品質はブドウで決まるといっても、やはり醸造技術の役割も大きい。いま脚光を浴びている「甲州」種ブドウから造るワインの品質を高めたのは、シュール・リー製法である。従来のワイン醸造では、発酵が終わった後、発生したを速やかに取り除くのが常識であったが、シュール・リーではそのまま発酵容器の底部に残し、旨味成分を引き出す製法である。フランスの技術であるが、シャトー・メルシャンが甲州種ワインへの応用を開発した。これで“淡麗で薫り高い辛口”のワインができるようになった。醸造法の画期的な革新である。
当時の勝沼ワイナリー工場長(浅井昭吾氏)が技術を公開した。「技術を共有して、ワイナリーが切磋琢磨しないと、勝沼は銘醸地にならない」という哲学だ。産地形成への強い思いからの決断である。90年、公開技術説明会には勝沼地区のワイナリーがこぞって参加し、甲州種ワインのほとんどがシュール・リー製法に転換した。メルシャンによる応用技術の開発が、日本のワインの評価が上がっていくための転換点になった。

甲州きいろ香の開発
また、甲州ワインは「香りが弱い」といわれるが、メルシャンは研究の結果、05年、ユズやカボスなど柑橘を思わせる香りの「甲州きいろ香2004」を発売した。甲州ワインを解析し香気成分の存在を発見し、ボルドー大学との共同研究で、甲州の隠れた香りのポテンシャルを引き出すことに成功した。
図1に示すように(技術素人の概念図)、甲州の香り成分はブドウの完熟前に低下していく。香り成分のピーク時(t1期)のタイミングで収穫することで、甲州が潜在的に持っている香りを引き出すことに成功した。この的確なタイミングを「適熟」と表現している。ワイン造りの本場・欧米ではこのt1期を完熟としているが、日本にはこの概念がなく、酸が低下し糖を高く感じるt2期を完熟としているので(その時はもう香り成分はない)、「適熟」という概念を創り出したのである。この適熟は完熟より半月ほど早い。また、収穫時期の問題だけではなく、香気成分は酸化すると壊れるので、酸化を防ぐ造り方、醸造段階の技術も必要だ。

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