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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第3回 イノベーションで先導し 産地発展の礎を築いた シャトー・メルシャン(山梨県甲州市)


「きいろ香」の成功は、すぐに内外で話題になり、米国のニュースで「日本ワインが旨くなってきている」と報道されるなど、世界的にも甲州ワインが注目を浴びるきっかけになった。それまで、甲州ワインはシュール・リー製法など取り入れてきているが、輸入ワインに比べて見劣りし、「香りが無く平坦」「個性がない」など、甲州の評判はよくなかったが、これで一気に好評に転じ、未来のないブドウ品種と見られていた甲州が躍進するきっかけになった(ちなみに、「きいろ香」の名前は共同研究を行なったボルドー大学の富永博士が愛していた小鳥が「きいろ」と名付けられていたことに由来する)。
メルシャンはこの「きいろ香」の技術も公開し、地域の人たちに収穫のタイミングを指導した。
なお、甲州で「香り」を持ったワインはメルシャンより1年早く、勝沼醸造の「アルブランカ イセハラ」がある(本誌前号拙稿参照)。これは伊勢原地区の土壌、風土というテロワールがもたらしたもので、自然の所産である。これに対し、メルシャンの「きいろ香」は研究開発の成果、技術によって創り出されたものである。伊勢原のテロワールは他の産地に移転できないが、「きいろ香」は技術移転できる。メルシャンがこの技術を公開した意義は大きい。

4 CSV活動による地域貢献

ワイン事業は、企業活動そのものが農業振興、地域活性化、生物多様性に貢献している。企業の社会に対する責任や活動は、従来、コンプライアンスや企業活動で儲けた金で社会奉仕的活動を行なう「企業の社会的責任」(CSR活動)が強調されたが、2010年代になって本業=事業そのもので社会に貢献するCSV活動(Creating Shared Value 共通価値の創造)に代わった。日本ワイン事業は、事業そのものが農地の遊休荒廃化を防いだり、地域コミュニティの活力に寄与している。
シャトー・メルシャンの椀子ヴィンヤードの事例を見ておこう。椀子ヴィンヤードが立地する上田市丸子地区陣場台地は、かって朝鮮人参や養蚕のための桑畑が広がっていたが、生産者の高齢化に伴い、90年代には農地は遊休荒廃化していた。00年頃、地域では荒廃地の解消を巡って議論がなされていた。当地区は雨が少なく、陽当たりが良く、排水性のいい台地で、ワイン用ブドウ畑の要件を備えていたので、メルシャンが原料確保のため圃場として確保した(注、椀子の名前は、丸子地区が6世紀後半、欽明天皇の皇子「椀子皇子」の領地であったことに由来する)。

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