ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第3回 イノベーションで先導し 産地発展の礎を築いた シャトー・メルシャン(山梨県甲州市)


ワイン醸造用のブドウは20~30aで、近年増やし始めた。生食用は房づくりのためすべてハサミを入れる必要があり、高齢になり肉体の疲れを感じるからだ。現在、甲州は20aで4t生産しているが、70歳になった頃には甲州が5割くらいに増えているかもしれない。息子さんは県庁勤めで、「将来、農業を継いでも、屋敷回りしか経営しないであろうし、醸造用専業の可能性もある」という。甲州は増える方向だ。
「日本ワイン」表示の制度化で、ワイナリー側はブドウを欲しがっており、またワイナリーの新規参入も増えているので、原料用ブドウは不足気味になっている、とみている。
甲州の取引価格は、220円/kg(推定)である。出荷は楽だ。会社が取りに来る。会社は圃場を見た上で、いつにしますかと相談がある。「きいろ香」になってから、収穫時期が早くなった。
当地域では、後継者のいる農家は少ない。遊休地が出ているので、新規就農者が市役所経由で見に来るが、傾斜地で機械が入らないので、規模拡大志向の人は借りないようだ。

七沢出荷組合の事例
甲府市七沢町の七沢出荷組合はブドウ専業の生産者の集まりで、40年以上にわたってメルシャンと取引している。組合員は当初26人いたが、現在は11人、うち醸造ブドウ生産者は9人(甲州は8人)である。組合員は10数年前から減り始めたようだ。
当地域は勝沼地区と違って、観光農園はない。表2に示すように、七沢出荷組合は栽培面積的には醸造用が生食用に匹敵している。生食用はすべて農協出荷、醸造用は甲州、アリカント、マスカットベーリーAを栽培し、メルシャンと長野県塩尻市の(株)林農園(五一わいん)に供給している。甲州は8割以上はメルシャン向け(30t)、アリカントおよびマスカットベーリーAはすべて五一わいん向け(40t)である。
甲州の取引価格は、210~220円/kg(推定)である。最近は年率2~3%上昇しているようだ。筆者が最低賃金の上昇率と同じですねとコメントすると、喜んでいた(注、山梨県の最賃は14~18年の5年間で14.7%上昇)。単収は、10a当たり3~3.5t。3tの場合、10a当たり粗収入は65万円、3.5tの場合、75万円になる(筆者試算)。単価は安いが、収量が多いので、かなりの高収益だ。七沢地区は勝沼より土壌がいいので、単収を多く認められているという。
反収約70万円という高収益が、醸造向け栽培が多い背景である。ちなみに、手間のかかる生食用は巨峰系1000円/kg、シャインマスカット1900円である(注、農協向け出荷価格。甲府は他産地より収穫期が早く、品薄期に出荷できるので価格が高い)。高齢化に伴って行なう甲州への改植は、シャインではなく、巨峰系から着手する。生産者たちの行動は極めて経済合理的である。

関連記事

powered by weblio