ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ロシア かつてのヘンプ繊維産出大国で小麦・ヒマワリに次ぐ第三の作物へ


西洋諸国が61年の麻薬単一条約をきっかけに大麻禁止政策を採用していくなかで、貴重な遺伝資源(約1400品種)を保有し続けたが、89年のソ連崩壊に伴って存続の危機を迎えた。そこで、同研究所と国際ヘンプ協会(IHA)は、93年からの5年間に6万6030ドル(約800万円)をかけてヘンプ遺伝資源保護プロジェクトを実施した。種子は年々発芽率が悪くなるため、5年に1回は栽培して種子を採取する更新作業が必要となる。このプロジェクトのおかげで多くの種子が更新され、いまでもVIRデータベースを見ると491品種が登録されている。
たとえば、フィンランドで95年に開発されたFIN-314の親品種はこの研究所のコレクションによる。FIN-314は背丈が130cm程度と低いため、収穫時に既存の小麦などの汎用コンバインが利用できる。また、抗アレルギー効果を持つγ-リノレン酸の含有率が4%と栄養価が高く、栽培解禁が進んだ欧州やカナダで人気の食用品種となった。
このようにこの研究所は前月号で紹介したウクライナの靭皮繊維作物研究所と同様に、ヘンプの産業化に陰ながら大きな貢献をしている。

北極圏の近くまで栽培可能

ヘンプは熱帯から亜寒帯まで幅広い気候地帯で栽培できる作物だが、北限はどこか。その答えは、バビロフ研究所の調査で明らかになっている。栽培実績のある最北の地は、シベリア北東部を流れるコリマ川中流に、平均気温が最も高い7月で13℃、最も低い1月でマイナス38℃という厳寒な町スレドネコリムスクの周辺(北緯65度東経153度)だ。当然、栽培されているのは耐寒性で早熟性の品種で、気温1~2℃で発芽する。発芽した種子は、24時間以内なら一時的にマイナス15℃まで耐えることができ、初期の成長期はマイナス5℃の霜に耐えられる。北極圏は北緯66度33分以北だが、ヘンプ栽培はほぼその境界近くまで可能なのだ。
なお、同国のおもな生産地である北緯45~55度の中央ロシアであれば、5月中旬に播種し、繊維は7月末から8月上旬に、種子は9月上旬にそれぞれ収穫する。ちなみに、日本最北端の北海道稚内市が北緯45度に位置するのと比べると、かなり厳寒な地域でもヘンプが長年栽培されてきたことがよくわかる。

20年の栽培見込みは1万ha

ロシアでは、07年に麻薬及び向精神物質に関する連邦法を改正し、THC(テトラヒドロカンナビノール)濃度が0.1%以下の品種を産業用ヘンプと定めた。EUが0.2%未満、カナダ、米国が0.3%以下なので、より厳しい基準である。産業用ヘンプとして再スタート後、09年には2つの研究センターで合わせて僅か100haだったが栽培面積は、18年には7900ha、20年には1万haで計画されている。

関連記事

powered by weblio