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【土門「辛」聞】
食の安全・安心行政に泥を塗った農水省消安局の「大罪」
- 土門剛
- 第175回 2019年03月29日
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知事選で感染公表を先延ばしした?
愛知県で豚コレラ発生確認の1例目となったのは豊田市のトヨタファーム(鋤柄雄一代表)だった。前月号では、感染の疑いの可能性のある子豚を県の立ち入り検査直前に駆け込み出荷して5府県に感染拡大させたことを厳しく批判しておいた。今度は、愛知県による1例目の「感染確認の先延ばし疑惑」を紹介する。感染確認の公表を意図的に遅らせたという疑惑である。
これが事実だとしたら、食の安全・安心行政の根底を揺るがす不祥事だ。まずは2月6日付け中日新聞の記事をお読みいただきたい。
「愛知県によると、豊田市の養豚場で4日朝、豚6頭に食欲不振など症状があり検査を開始。5日午後3時にうち5頭から豚コレラの陽性反応が出た。同県田原市にも千頭を飼育する関連養豚場があり、感染していないか検査している」
愛知県が検査を開始した前日に大村秀章知事の3選をかけた知事選の投開票があった。疑惑を抱いたのは、その翌日付け中日新聞の記事だ。
「愛知県によると、豊田市の養豚場では1月27日から豚の体調不良の症状が出ていたが、県に初めて連絡したのは4日。これを受けて同日に養豚場を訪れた県の獣医師は、症状や血液検査の結果から豚コレラの疑いを持たなかったという。獣医師は出荷自粛を要請した時点で、宮田村への出荷を把握したが、県畜産課に報告していなかった」
3日に愛知県知事の投開票があったことを前提に2つの記事を時系列で整理していくと、愛知県は、大村氏の知事選勝利を待って豊田市のトヨタファームへの検査に入ったというストーリーを思い浮かべてしまう。1月27日に飼育豚の体調異変に気づきながら、県への連絡が8日間も遅れたというのは、どうみても不自然だ。
そのタイミングは、隣の岐阜県で6例の感染公表があり、同29日には7例目の感染公表もあった。東海地方で豚コレラ・パニックが起きていた最中のことだった。養豚家なら、体調異変に気づいた時点ですぐ県へ連絡するのが基本中の基本。長年、養豚業を営んできた鋤柄代表が、その行動に踏み切らなかったというのは、よほど何か特別な強い働きかけでもあったと勘ぐってしまう。
その後、豚コレラ感染はトヨタファームを中継点に5府県に拡大した。そして出荷先で殺処分もあった。1月27日から2月4日まで何があって、その事態に鋤柄代表がどう対応したか、とりわけ県とのやりとりについてぜひ説明してもらいたい。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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