記事閲覧
畜水課担当者はしばらく抵抗したが、頃合いを見計らいトヨタファームがエコフィードを使っていると書いた農水省作成の資料名を出して、「鋤柄代表はエコフィードを使っていることをPRしている。あなたたち(畜水課)も、トヨタファームと鋤柄代表をエコフィード普及の広告塔にさんざん使ってきたではないか。それで豊田農場がエコフィードを使っていないとは言わせないぞ」。ここでようやく完落ちしてくれた。
消安局が設置された経緯を振り返ってみよう。ご存知の通り、2001年に感染が確認されたBSE問題がきっかけだった。感染拡大を防げなかった畜産局を解体、畜産業や養豚業を保護奨励する課は生産局に移し、家畜防疫に関係した課を新設の消安局に組み入れた。03年のことだった。その目的は、「本省の産業振興部門から独立して食品分野における消費者行政とリスク管理を一元的に担う」(農水省)。
その消安局が設置されて16年経過した。畜水課担当者とのやりとりで再認識できたのは、豚コレラ対応をみる限り、消安局は、旧態依然たる産業振興色の強い食品安全行政の方向に後戻りしていることだった。まことに残念なことである。
ガイドラインは守られていたか
エコフィードは、何も禁断や禁制のものではない。資源小国のこの国が生み出した資源リサイクル型の立派な飼料である。ただし条件がある。その製造工程において法令遵守することである。
その基準のポイントは製造工程での加熱処理。原料についている病原菌を死滅させるためだ。飼料安全法にもとづいて次のようなガイドラインが定められている。
「生肉等が混入している可能性のあるものは、70℃30分以上または80℃3分以上加熱処理した後に使用する。なお生肉等が混入している可能性がない場合においても病原微生物汚染を防止する観点から必要に応じて適当な温度で加熱して使用する」
トヨタファームが、このガイドラインに沿わずエコフィードを調製加工し、飼育豚に給餌したかどうかは、いまも分からない。農水省消安局や愛知県がきちんと調べていたかどうかも藪の中。とにかくエコフィードについは何の情報も流れてこないのだ。ただ結果概要にはとても気になることが記載されていた。トヨタファームの衛生実態についての調査チームの所見である。
「最初に流産が認められた繁殖豚舎の手前の分娩舎で使用する、離乳豚の輸送用の手押し車は、上記の着替え場所に置いてあり、必ずしも洗浄・消毒は行っていなかった。農場でできた堆肥は無料で配布しているが、農場奥の堆肥置き場まで堆肥を取りに来る車両については、洗浄・消毒を行っていなかった」
会員の方はここからログイン
土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)