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イベントレポート

農村経営研究会2019年第1回定例会「ソーラーシェアリングの技術と理論~農業経営と地域開発の手段として」

農村経営研究会は2月19日、都内で2019年の第1回定例会を開催した。今回は、本誌2018年12月号に掲載したソーラーシェアリングの開発者、長島彬氏を講師に迎えた。
同氏は農業機械会社を勤め上げた後、03年にソーラーシェアリングを発想した。さらに14年には、パネルを可動式にしたスマートターンを考案し、現在、その普及に努めている。いまでは同氏の技術を活かし、パネルの下でトラクターやコンバインで作業したり、自然との共生をコンセプトに農村地域の開発をしたりという実践例もある。今回の講演では「自然を壊してはいけない」という信念が感じられた。以下、講演のなかから、主にソーラーシェアリングを開発した背景と課題についてまとめた。なお、技術の詳細は12月号を参照してほしい。

原子力を無くすために発想

人間が火を使い始めてから50万年。それを考えると、産業革命からわずか200年の間に、石炭から石油、天然ガス、原子力や核融合へと、人間は目まぐるしく新たなエネルギーに手を付けてきた。ポスト化石燃料として期待された原子力や核融合は、技術的にも未熟でコストも膨大で、周知のとおり自然を壊す危険をはらんでいる。
ソーラーシェアリングは、原子力発電を無くすということから出発している。
ソーラーシェアリングと同じ太陽光をエネルギー源としたメガソーラーも、さまざまな問題があることが分かってきている。大地をすっかり覆えば不毛の大地になる。太陽光を受けやすいように傾斜地につくれば大雨で倒れる。架台の強度や基礎の強度を下げた“偽りの廉価”仕様には注意が必要だ。

ほどよい日陰をつくる構造

ソーラーシェアリングのパネルは1枚の面積が小さい。その理由は、ほどよい日陰をつくり、風を逃す構造を求めたからである。ソーラーシェアリングの案は、ドイツの学者が1981年に発表した論文にある。農作物は基本的に強い太陽光を嫌う陰性植物が多いので、農業とソーラー発電は両立できるというものだ。
晴天時、最も強い太陽光は10万ルクスに達するが、作物の光飽和点のデータでは3万~4万ルクスで光飽和点に達するものが多い。サトウキビやトウモロコシなどは、光飽和点がなく、光が強いほど良いとされている。しかし、このデータには温度や水が計算に入っていないと考えられる。夏の暑い時期、植物は水を蒸散して自分の生命維持に使ってしまい、光合成をしなくなる。

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