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イベントレポート

農村経営研究会2019年第1回定例会「ソーラーシェアリングの技術と理論~農業経営と地域開発の手段として」


陸地の植物は、強すぎる光を避けようとする。それは、植物がもともと光の弱い海で生まれたからだと考えられる。光が強いとき、葉緑体はどうなるか。光が弱いときは光に向かって横一列に並んでいるのに対し、光が強いときは光合成をしないように光に向かって縦一列に並び、光を受けないようにする。農学博士によると、光合成の仕事をしているのは日陰になっている内側の葉であって、外側の葉は日陰をつくる役割をしている。私は実際にトウモロコシの栽培試験を行ない、ほどよい日陰の下の成長が良いことを実証した。
ソーラーシェアリングでは、パネルの面積を小さくして圃場を覆う面積を3分の1にし、「木洩れ日のような光」を作物に与える。遮光率が高すぎると減収になる場合があるが、原則、ソーラーシェアリングによって作物の収量は減らない。

風を逃がす構造

ドイツの学者の論文では、強度に問題があった。03年に開発を始めたとき、いかに強風に耐えるかということからスタートした。思いついたのは、パネルを水平にして風を逃がすというものだ。こうすることによって、風が吹いても浮き上がって飛ばされることがない。
問題は巨大台風のときの強風にいかに耐えるか。強風で吹き飛ばされるという失敗事例は、計算が不十分なことによる。風によってパネルにかかる負荷は風荷重(単位はニュートン)と呼ばれる。私は、パネル面積1平方m、風力係数1とした場合、最大瞬間風速ごとに風荷重が分かる基礎グラフを公開し、それを基に簡単に強度を割り出せるようにした。ソーラーシェアリングの場合、建築学に用いられる計算方法ではなく、物理学の計算方法を用いて、翼の計算のように風で浮き上がる力を決める揚力係数と、押される力を決める抗力係数とを分けて計算する必要がある。
計算上、メガソーラーの3分の1のパネル面積にすれば、それだけで風荷重は3分の1になる。さらに水平にすれば風力係数が5分の1になるので、掛けると15分の1にまで小さく下げることができる。
強風のときは水平に、普段は採光の効率をよくするため30度の角度にし、太陽の動きに合わせて1時間に一度、パネルをアクチュエーターで回転、発電量を増加させてコストの上昇をカバーさせるようにした。これが可動式のスマートターンという仕組みである。
農業にとっては、土地、水、空気、太陽光はお金を生む財産である。ソーラーシェアリングで収入を得て、パネルの下では、日本の狭い農地を活かした有機栽培、つまり、精密農業で美味しい作物をつくることによって日本農業の維持発展に貢献できる。農水省も13年に認め、18年5月には農地転用を10年に延期した。

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