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新・農業経営者ルポ

牛島謹爾シリーズ(2)代々の先取りと提案力で高級レストランのシェフの心をつかんで離さない


それを実地で確認していくのが件の遊びの畑だが、商品開発のスピード感は若干落ちているという。8:2の2の部分も減ってきているそうだ。
「以前は先代一人でできたんでしょうけど、規模の拡大とともに、自分に時間がなかなか取れなくなってきました。いまでは顧客に提案するとすればそれなりの量も必要になってきます。そこでためらってもいますけど、いずれにしてもこれではいけません。先代と同じやり方でなくても、楽しさを追求するアプローチで臨んでいけたらと思っています」
それと並んで直面している課題は組織づくりだという。稔は十分すぎるほどのマーケットを開拓した。それと比例して売り上げも毎年伸びてきたのだが、安定供給には労働力が欠かせない。気持ち良く働いてもらうための配慮として、賞与も支給する給料や社会保険の完備といった待遇面はもちろん、休憩室や女性更衣室、男女別のシャワールームとトイレを設置している。女性向けでは、育児休業や短時間勤務制度などの導入、重労働の業務改善を図ってきた。今度は大所帯をどうまとめるかだ。従業員は100人を超えており、真透ら役員で見られるレベルではない。
「そこそこの規模になってきますと次のステップに上がれないとよその法人からも耳にしますし、自分でもそれを実感しているところです。まだ始めたばかりですけど、自己評価を含めた人事考課や社員によるパートさんの統括、外部団体と連携した社員教育に舵を切っています」
真透はまだ43歳だが、事業の継承を視野に入れ出している。というのも真透には子どもがいない。そこには願いも込めた目算を立てていた。
「稼げる農家というと大げさですけど、利益がきちっと出て顧客から支持される農家であれば、誰かしら後を継ぎたいと思う人が現れてくるでしょう。そのためにも魅力ある農家になれるよう、これからもがんばっていきます」
この糸島の地に鍬を下ろしてから半世紀が経った。その間、民藏、稔、そして真透と代替わりしても、理念は一貫している。“どこにもないものをどこよりも早く商品化し、豊富な品ぞろえを含めた提案力”で顧客に応える。時代に合わせて手がける品目が変わっても、そこはぶれていない。当初の50 aから約6haに規模が拡大でき、県外にまで農地を広げられたが、売り上げありきでそうしてきたのではなかった。顧客に求められ、それに応えてきた結果が6haだったのだ。代々の思いが“浸透”した末に待っているのは久保田農園の第三章だろう。(敬称略)

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