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山道弘敬の本質から目を逸らすな

馬鈴薯のカルシウム施肥で何か特別なことが起きたのだろうか

馬鈴薯専門誌『ポテカル』に馬鈴薯のカルシウム施肥に関する記事が連載され、筆者もそれを批判的な視点で読ませてもらった。小社が2013年に米国のウィスコンシン州立大学のジワン・パルタ博士(以下、博士)を北海道帯広市に招聘したことがきっかけとなり、帯広畜産大学とカルビーポテト社との間で馬鈴薯のカルシウム施肥についての研究が始まったことはとても喜ばしいことであった。
との間で馬鈴薯のカルシウム施肥についての研究が始まったことはとても喜ばしいことであった。しかし、今回の記事を読んで、日本の馬鈴薯でのカルシウム施肥の火付け役となった筆者としては、この短期間の試験結果で何か馬鈴薯のカルシウム施肥という大きなテーマのすべてが網羅されたという印象を北海道の馬鈴薯生産者が持ったとすれば、それは大きな間違いであろうと率直に指摘せざるを得ない。
筆者が馬鈴薯のカルシウム施肥に取り組もうと考えたのは、そもそも十勝や美瑛地区の生産者との間での話ではまったくなかった。05~06年ごろ、『現代農業』誌上でも取り上げられたことがあるが、羊蹄山麓の生産者の率直な不満に耳を傾けたことに起因する。羊蹄山麓といえば男爵薯の主産地であり、この品種は中心空洞が発生しやすいことで知られる。頭を悩ませていた当地区では、「空洞センサー」なるものを選別ラインに組み込み、空洞塊茎の除去を機械的に行なうことで消費者クレームの低減に努めてきた。ただ、生産者からは不満の声が上がっていた。確かに市場からのクレームは低減したのであろうが、生産者の立場に立てば、空洞センサーの導入で選別コストは上がるわ、歩留まりは低下するわで踏んだり蹴ったりである。最初に中心空洞を防止する栽培技術を指導すべきではないのかとの批判はある意味当然であった。
筆者は、この真っ当な指摘に耳を傾け、中心空洞を防止する栽培技術はないものかと調べたところ、博士の研究に行き着いた。博士は世界最大の肥料会社であるノルウェーを拠点とするヤラ社を指導しており、同社はそれに基づいて硝酸カルシウム肥料の普及に努めていることがわかった。同社はいわゆる「ノル窒素」の名称で知られる硝酸カルシウムを製造・販売していることでもともと有名であった。
筆者は、ヤラ社のシンガポールの出先機関と連絡を取って情報交換を始めたところ、米国のみならず、ヨーロッパやオセアニアなどで広く馬鈴薯のカルシウム施肥の普及に同社がかかわってきたこと、これから日本に対しても紹介したいと考えていたところだったとの説明を受けて日本の代理店を紹介された。
筆者は、ヤラ社とその代理店の協力を得てイギリスに飛び、カルシウム施肥の実態調査を行なうこととした。同社はイギリスの肥料会社を買収しており、その会社のアグロノミストが筆者を案内してくれ、曰く「イングランドでは泥炭なるがゆえに地力窒素が豊富なため、無窒素肥料でも馬鈴薯が採れる地帯があるが、そこでさえ硝酸カルシウムを施用してカルシウム施肥に努めている」とのことであった。
博士が多数論文で報告しているとおり、馬鈴薯塊茎におけるカルシウムによる品質改善は空洞の防止以外にも、褐色芯腐れの防止、表皮の品質改善、打撲の軽減、初期生育の改善など多岐にわたっている。馬鈴薯の先進国での技術普及の実態に心を強くして日本での普及に努めようと決断した。
硝酸カルシウムの普及を開始して間もなく、当時キリンビールの子会社であったジャパンポテト社から打診があり、我々の推奨していた硝酸カルシウムを試してみたいとのことであった。同社は馬鈴薯品種の導入会社であり、フランスから持ち込んだ品種で空洞が多発するものがあるため、試してみたいとのことであった。

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