ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

山道弘敬の本質から目を逸らすな

馬鈴薯のカルシウム施肥で何か特別なことが起きたのだろうか


博士は1985年前後からすでに30年以上もこのカルシウムの研究に打ち込んできた。その10分の1程度の試験結果で結論が簡単に出るものとは到底思えない。
硝酸カルシウムの最大の欠点は窒素が付随しているため、カルシウムをたくさん与えようとしたときに窒素が邪魔してあまり施肥量を増やせないことである。そこで、博士は塩化カルシウムと硝酸カルシウムとを半々に混合したカルシウム肥料を開発している。塩素は一般的に悪さをするということではあるが、その負の側面がどの程度のものかを確かめながら、施用の限界を見極めつつ、この肥料の普及に努めてきたという。それだけ多くのカルシウムが馬鈴薯には必要だとされている。しかも、肥大が続く後半に向かってということである。
筆者は肥料会社と協力し、施用してもすぐに溶けない硝酸カルシウム(商品名:NEWさくら)を試作して昨年から日本に持ち込んでいる。
十勝地区では、数年前にメークインに空洞が発生して以来、予防措置として硝酸カルシウムを施用している生産者が少なくない。日高管内のむかわ町ではクエン酸カルシウムを使用し、効果を上げている生産者から何度か電話をもらってきた。
ジャパンポテト社の例を引くまでもなく、欧米から持ち込まれた品種は日本で栽培すると空洞を多発するものが少なくないと聞く。そして、それを以って日本の環境に合わないと判断される例が少なくないと聞く。果たしてそうなのか。カルシウムのような重要な栄養素が十分に施用されていない状態では、品種本来の力も十分に発揮されないのではないか。
カルシウムのテーマは馬鈴薯については非常に重要な、しかもなおざりにされ続けてきたテーマであると考えている。小社は、研究所でもなく、肥料会社でもない。馬鈴薯の貯蔵を専門とするコンサルタント企業であるが、ウィスコンシン州立大学でケルマン博士とマクガイアー博士によって明らかにされたカルシウムが軟腐病に対して抵抗性を塊茎にもたらすという印象的な研究報告にも注目してきた(写真2)。カルシウムは馬鈴薯の貯蔵性確保で間違いなくキーポイントであると考えるがゆえにこだわりは強い。中途半端な研究で終わらず、皆を納得させられる結果をもたらしてほしいものである。
余談だが、欧米では基肥の窒素をゼロにし、馬鈴薯を栽培する試験が数多く行なわれてきた(注:筆者の翻訳版『ジャガイモの窒素と水管理』に詳細あり)。そこでは、全窒素肥料を適切な追肥で収量を減ずることなくまかなうことが可能との報告に終始している。であるならば、基肥の窒素量をゼロにし、硝酸カルシウムで追っていくことも可能なのではと想像しており、その分だけカルシウムを施用することにもなる。いずれにしろ、継続的にしかもタイムリーにいかに施用できるのかということが課題であろう。硝酸カルシウムのメリットは窒素肥料をこれで補給できることである。基肥を調整すれば、硝酸カルシウムはまるまる追加費用とはならない。一方、硫酸カルシウムはまるまる追加費用となる。硝酸カルシウムでは、基肥窒素を減ずることで、全体の肥料代の節約の可能性も残されている。

関連記事

powered by weblio