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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第4回 6次産業化した町ぶどう郷勝沼 ワインツーリズム人気(山梨県勝沼地区)
- 評論家 叶芳和
- 第24回 2019年04月26日
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1 ワインツーリズム観光
勝沼(甲州市)は結構、観光地である。人口8000人の小さな町に、年間250万人の観光客が訪れる。人口1人当たりの入込観光客数は、鎌倉市118人、北海道富良野市83人、などであるが、勝沼は300人である(表1参照)。超有名な観光地より、勝沼は観光密度が高い。ちなみに、軽井沢は449人である。軽井沢を除けば、勝沼は最上位にある。全国トップレベルの観光地域といえよう。
観光農園でのブドウ狩り、ワイナリーでのテイスティングやワイン購入の客が多い。風光明媚な田園都市の散策も人気の背景だ。観光客は女性客が多い。女性比率6割以上といわれる。「ワインは女性を呼ぶ!」は至極名言と思う(山梨日日新聞18年12月24日付け「時標」)。
洒落たレストランが多い。ワイナリー付設もあるが、独立した街のレストランも洒落たものが多い。勝沼バイパス沿いの下岩崎にあるビストロに入ると、ここは東京銀座の有名フランス料理店のシェフが開業したフレンチであるが、フランス人ツアー客も大勢いた。景観と美食が楽しめる。
勝沼はブドウ発祥の地であるが、明治初期、ワインが本格的に産業化したのも勝沼であった。大正期には、欧州系品種の導入、養蚕業の衰退に伴い、桑畑がブドウ畑に転換されていった。
観光農園も明治期に発生したが(明治25年宮光園)、大きく発展したのは戦後、1958年の新笹子トンネル開通(国道20号線)や、1977年の中央自動車道の開通で、団体ベースの観光客が増えたことが要因だ。その後も、マイカーによる家族連れ観光客が増えた。近年は農家の高齢化、後継者不足によって減少しているが、今でも観光ブドウ園は150軒ある。一方、少子高齢化の影響もあって、近年はブドウ狩りよりもワイナリー訪問客の方が増えているようだ。
現在、山梨県にはワイナリーが81あるが、そのうち32が勝沼地区に立地する日本一のワイナリー集積地である。このように、勝沼はブドウ栽培、そして、それを1次産業とした2次産業(ワイン製造)、第3次産業(観光)の集積で栄えてきた。現在も、表2に示すように、農家の95%はブドウを栽培し、経営耕地面積の83%はブドウ園が占拠し、就業者の36%はブドウをはじめとした農業に従事している。勝沼はブドウ依存度の高い地域である(注)。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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