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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

費用対効果と投資対効果(5) 自賄いの真価を問う

農業の醍醐味とは

“儲かる農業”という表現も最近は見慣れてきたように思う。しかし、残念なことにほかの産業に比べれば経営の利益率は低く、経営者層の時給もいまいちという現実は変わっていない。そのことを逆手に取っているからこそ世間で“儲かる農業”がウケたわけで、国や自治体はその実現に向けて農政を組み立てている。しかしながら実際には、儲かる経営にたどり着いている経営はほんの一握りである。
では、思ったほど儲からないのに、農業の何が楽しくて、おもしろいのだろうか。私自身いくつも答えは思いつくのだが、そのなかでも自分の経営のなかで道具や材料を生み出せるところに農業ならではの醍醐味を見いだしている。たとえば、自分で交配した牛を置いておくと、子牛を産んでくれる。その牛たちの糞尿は堆肥になるので、ずっと手に入るという安心感のもとで牧草を作り、給餌できる。さらに余った堆肥で育てたアスパラが太く、おいしくなる。こうした土づくりや有機物の循環は、味と商品力を高めるだけでなく農産物あるいは農場の物語として販売促進にも結びついている。これらはまさに「自賄い」という言葉で説明されるところだろう。買う以外に、自分の経営のなかで作るという選択肢を持っているのは、何よりの強みである。
費用対効果あるいは投資対効果は、購入品に対する考え方に留まらない。トラクターや作業機、収穫機などの農業機械でも、肥料などの資材でも、飼料でも、購入して調達する以外に、材料を調達して作ったり、改造したりする方法もある。購入価格を見極めるためには二社以上の相見積もりを取るのが有効な手だが、今回は農業の醍醐味である「自賄い」について経営的な視点で考えてみようと思う。

買ったほうが安く、作ったほうが高いことも

北海道の農家は自作地も敷地面積も府県に比べると広いので、自賄いで建物や農業機械を製作する人も少なくない。私もご多分にもれず木工が得意で、自宅の隣に設けた「美々庵(びびあん)」という加工場兼飲食店の内装はほとんど自分で手がけた。飲食店として営業許可を申請するノウハウは持っていたので、古い建物を修繕し、骨組みとコンクリート打設以外は自賄いで済ませた。

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