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【土門「辛」聞】
ワクチン不在で失敗した史上最悪「豚コレラ」防疫作戦
- 土門剛
- 第176回 2019年04月26日
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動物衛生・技官グループが振り付け
豚コレラ対策は、農水省消費安全局で家畜防疫を担う動物衛生課と畜水産安全管理課が担う。前者が豚コレラ防疫の司令塔役を果たし、後者はワクチン開発などを担う兵站部門という役割分担。それぞれ獣医の資格を持つ動物衛生の技官が就く。
両課を指揮する消費安全局長が、この4月1日付けで交替した。2017年7月に就任した池田一樹氏が退職したのだ。一応、定年退官という説明だが、更迭とも受けとれる人事でもあった。筆者は、敵前逃亡に近いと解説する。
退官前々日の3月30日の土曜日のことだ。どうしても聞いておきたいことがあったので、荷物の整理で登庁してきているものと思い、昼頃、同総務課と動物衛生課に電話を入れてみたが、登庁してきていないという返事だった。
池田氏の1日付け人事は3月26日に公表があった。その翌日から30日にかけて岐阜と愛知で計6件の発生確認があった。彼の任期は31日の日曜日までだ。本省だけでなく現地でも多くの部下が対策のため休日出勤を強いられていた。池田氏のこの態度は非常識極まる。敵前逃亡と厳しく批判したのは、こういうエピソードがあったからだ。
ちなみに池田氏は、動物衛生の技官として採用された。獣医でもある。その池田氏が、26年ぶりに起きた豚コレラ禍の最中にやめていくというのは、ある意味、皮肉なことである。
池田氏が去った後、家畜防疫を担うのは、その部下だった熊谷法夫動物衛生課長だ。池田氏と同じく動物衛生の技官で獣医の資格を持つ。15年4月以来、課長在任としては異例の長さ。豚コレラの生き字引のような方である。
熊谷課長を補佐するのは、石川清康畜水産安全管理課長。この2月から東海農政局岐阜拠点に張り付いたままだ。養豚場の衛生管理で現地指導の任に当たっている。管内の養豚場に飼養衛生管理基準を守らせるためだ。指導の甲斐なく発症続発に見舞われてしまった。豚コレラの家畜防疫態勢のどこかに欠陥があることを雄弁に物語る事実かもしれない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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