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農水省は、初発が確認された9月9日付けで農林水産大臣を本部長とする「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」を設置した。大臣が政治力を発揮することはまずない。すべては消費安全局長や動物衛生課長の振り付けによって事を決めているのだ。
なぜ新型ウイルスだと公表しないのか
動物衛生・技官グループが大臣にも伝えないでひたすら隠し続けている驚愕の事実がある。前月号で予告したワクチンのことである。この国には、岐阜と愛知で流行している豚コレラ・ウイルスに有効なワクチンがないのだ。蔓延する豚コレラに現場はワクチン使用を強く要望する。
それに吉川大臣は、「(ワクチン使用は)最終手段だ。いったん使うと(撲滅を示す)清浄化に時間を要する」(2月8日、閣議後の記者会見)という弁明を繰り返す。これは動物衛生・技官グループの説明を鵜呑みにしたものである。
国備蓄のワクチンは「GPワクチン」1種類のみ。流行中の豚コレラ・ウイルスに効くかどうかの科学的データはないはずだ。多少の抗原性はあるかもしれないが、そうあって欲しいという動物衛生・技官グループの単なる期待願望にすぎない。
池田氏に電話をかけて聞こうとしたのは、そのワクチンのことである。池田氏に肩すかしを喰わされたので、代わりに動物衛生・技官グループのリーダー、熊谷課長に質問事項をFAXで送ることにした。送付は4月8日で書面での回答を求めた。
「2018年9月14日、農研機構は、下記に列挙した豚コレラに感染した飼育豚及び野生イノシシのウイルスについて正確な種類について、サブ・ジェノタイプ『2・1』と公表した。そのタイプには、『2・1a』『2・1b』『2・1c』『2・1d』と、さらなるサブサブ・ジェノタイプがあるはず。そこで、岐阜と愛知で確認されたウイルスのタイプは、どのサブサブ・ジェノタイプになるのか」
10日付けで回答が来た。「2・1dに該当します」
ウイルスの遺伝子を家系図のように整理したものを系統樹と呼ぶ。ウイルス遺伝子が変異していく流れを遺伝子配列によってグループ化したものである。国内では農研機構の動物衛生研究部門が作成する。
あえてこの質問から切り込んだのは、新型ウイルス「2・1d」に対する国備蓄のGPワクチンの効能評価について動物衛生・技官グループがどういう結論を下しているかを知るためだった。
浮かび上がってきたのは、「2・1d」のことをひた隠しにしているという事実だった。そのきっかけは、岐阜県のホームページだった。昨年9月に初発を確認して以来、新たな感染例を公表するたびに系統樹をアップしている。そのつど系統樹をチェックしていて、サブサブ・ジェノタイプのことが記載されていないことに気がついた。同畜産課に電話で理由をたずねてみたら、こんな答えが戻ってきた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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