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「国が備蓄するGPワクチンは、サブサブ・ジェノタイプ4種類のうち、どのタイプに有効なものか」
すぐさま次のような回答(4月10日付け)が戻ってきた。
「豚コレラのワクチンの効果は、遺伝子配列による分類であるサブ・ジェノタイプにより、効果に差がないと言われていますので、ご指摘のどのタイプにも有効と考えられます」
GPワクチンも、中国のC株ワクチンと同じ1950年代半ばに当時の家畜衛生試験場(現・農研機構動物衛生研究部門)が開発に着手、10年余の研究を経て65年に製品化されたものである。C株ワクチンと同じぐらいロングセラーを続ける。
不可解なのは、効能評価の試験もせずに、このような見解を示してきたことだ。残念ながらこの説明には事実の裏付けが何もない。
農研機構は、昨年9月9日に確認された1例目の豚コレラ・ウイルスの遺伝子タイプをすぐに解析している。4日後の同13日に公表された解析結果の概要は次の通りである。
概要1「感染豚から検出されたウイルスはサブ・ジェノタイプ2・1 のグループに属していました」
概要2「(1)国内で使用されるワクチン株を含め、多くのワクチン株はジェノタイプ1のグループに属すること、(2)サブ・ジェノタイプ2・1 のグループに属するウイルスはこれまで日本で検出されていないこと、(3)サブ・ジェノタイプ2・1に属するウイルスは、ヨーロッパやアジアで検出されていることから、当該ウイルスは海外から侵入した可能性が高いと考えられました」
概要3「今後、当該ウイルスについて、抗原性並びに感染試験を含めた病原性の詳細な解析を行っていくことにしています」
この解析結果のポイントは、新型ウイルス「2・1d」が国内で初めて確認されたことである。「概要2」で、国内で使用するワクチン株が、「サブ・ジェノタイプ1」に対応したものであることを示し、「概要3」で、農研機構が「2・1d」に国備蓄のワクチンが有効かどうかの効能評価を行なうと約束している。
解析結果の公表から8カ月経過しているが、農研機構はいまだに解析のフォローアップについては音沙汰なしだ。フォローアップがないというのは、筆者指摘の通り、GPワクチンのような国内で使用するワクチンが、「2・1d」に効果がないか、あったとしても十分ではないということなのかもしれない。
4月10日付け熊谷課長の回答に対し、筆者は、すかさず同日付けで「その具体的な根拠を示すよう」求め、その裏付けとして「農研機構なり公的機関が、抗体・抗原反応を確認した結果にもとづく」資料の提出を条件につけておいた。勝手な言い逃れをさせないためだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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