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土門「辛」聞

農家の“間引き”始まる。誰が消え、誰が残るのか。ズバリ明かそう

 Sさんのドタキャン分まで埋め合わさせられた講演が終わり、「はい、質問は何かありますか」と会場を見渡したら、この会のスタート時からのメンバーであるAさんが、「はい!」と元気よく手を挙げ、「銀行が、もっと農業者に融資するようにして欲しい」、「農業補助金で施設を作る場合、100年耐えられるぐらいの設計にして欲しい」との陳情めいた質問をぶつけてきた。筆者の回答はこうだった。

「銀行が農業向け融資を渋っているというのは誤解。農業者であっても、経営内容がしっかりしていれば、担保はなくても融資に応じてくれるよ。行政にすり寄って補助金依存のスタンスでは銀行は相手にしないよ。いずれ○林○業金融○庫もそうなるだろうな。農業補助金について、100年耐えられるような施設を作ってくれとおっしゃっているが、国家財政危急の折、そのようなカネはないよ。作りたけりゃ自力で作ることだ。何事も行政や補助金に頼るのは、チト考えが甘いのではないかな」

 質問したAさんは、鳩が豆鉄砲を喰らったかのようにポカンとしておられた。ひょっとして筆者から同意を得られると思っていたのかもしれない。あるいはSさんなら同意してくれるのはずなのに、なぜこんな返事が戻ってきたのか釈然としなかったのかもしれない。

 ハプニングはその後に起きた。二次会か三次会かの席で、主宰者のTさんが、「おい、もっと言い方があるだろう」と野太い声で発言内容にクレームをつけてきたのである。最初は無視していたが、あまり執拗に難詰してくるので、「Tさんよ、頭を冷やして考えたらどうかい。政治や行政にお願いをすれば融資を受けられたり補助金がもらえると思うのは、認識不足も甚だしいよ。そんな甘たっれた考えを納税者が耳にしたら怒るよ。本当のことを話して悪いと言うのなら講演会などやる資格はないな。永田町や霞ヶ関にでも出かけて『補助金くれ、融資してくれ』と祝詞をあげたらどうかい」と言い放ってやった。それでも納得しないのかTさんはシャツの袖をまくりあげて大声でわめいておられた。

 その場にいた畑作農家のBさんは、「道東の畑作農家でも、銀行はカネを貸すようになったよ」と耳打ちしてくれた。Tさんに、そのことを教えてやろうと思ったが、罵声のシャワーを浴びるのが嫌でやめてしまった。

 確かTさんが主宰する会は、○○○農業サロンという名称だった。親分肌のTさんが、道内の生産者を集め、サロンで安酒を一杯やりつつ気炎をあげていたような「在りし佳き日」はもう遠い過去のことである。

 誤解なきよう言っておくが、質問してきたAさんが何も経営危機にあるとは言っているのではない。これからの農業者は、政治や行政や補助金をアテにするのではなく、土とマーケットをじっくりと見据える経営に転ずべしと強調しただけである。Aさん、今からでも遅くはない。考えを改めることだ。

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