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専門家インタビュー

土壌学者(ペドロジスト)に聞く農地の土壌との付き合い方 前編~土壌断面調査から読み解く土づくり~

土壌の種類や分布を示す土壌図は、いまやデジタル版が公開され、モバイル端末で閲覧できるアプリ「e-土壌図II」によってさらに気軽に閲覧できるようになった。 土壌学者(ペドロジスト)はその礎となる土壌調査を行なう土壌のプロフェッショナルだ。土壌に向き合い、その場に人を集めて、その価値を広めるために現場での土壌調査にこだわり続ける大倉利明氏に話を聞いた。 (取材日:2018年7月24日、取材・まとめ/加藤祐子)

黒ボク土に魅せられて土壌学の世界へ

――2018年春に伺った先生の土壌断面調査のライブ解説では、周辺の地勢や耕作履歴などのインタビューを交えた土壌談義に皆さん釘づけでした。今日は土壌に関するお話をいろいろ伺いたいのですが、はじめに先生が土壌に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?
大倉利明氏(農研機構・農業環境変動研究センター・土壌資源評価ユニット長)私が携わっている土壌学(Pedology)という学問を大学で学ぼうと思ったのは、高校時代に読んだ日本の土壌の本で黒ボク土に魅せられてしまったからです。
――ご出身はどちらですか?
大倉 岐阜の飛騨地方です。神岡鉱 山の町だったので、町内に鉱石の博物館がありました。子供の頃にそこで見た鉱物の結晶があまりにもきれいで、その頃になりたかったのは地質学者。ところが、高校で東京に出てきて、たまたま読んだのが土壌の本でした。その本に載っていた「黒ボク土」に興味を持った私は、 土壌ができる過程を調べたくなって、その分野がまさに土壌学だったんです。その土壌学を学びたくて大学を選んだんですよ。
――「黒ボク土」に惹かれた時点でマニアックでいらしたんですね(笑)。
大倉 そうそう。大学1年生の時点でペドロジーって言葉を知っていたのは仲間内では私だけでしたから。将来の指導教官には、後にも先にも、“ペドロジー”を知っていて大学に入ってきたのは私だけだったと言われましたよ。
――土壌調査のノウハウは学生時代に学ばれたのですか?
大倉 調査自体は、大学の研究室に入る前からやっていました。大学2年生のときに、府中郷土の森博物館を開館するための準備室にアルバイトに行っていたときにですね。以前、展示室の壁に飾られていた3本の巨大なモノリスは、学芸員の人と二人で作りました。彼からモノリスの作り方や砂粒の顕微鏡で見る方法を学んで覚えていきました。露頭でモノリスを採取したり、地層を調査したり、遺跡調査とかに参加したりして、現場で黒ボク土をいっぱい見ていました。土壌学研究室に入ったときには、「ボクはやることが決まっているので放っておいてください」と先生に宣言して、結局博士課程まで進んでしまったんですよ。

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