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特集

ラウンドアップの風評を正す


ところが、GM技術には当初から反対運動があった。そもそも「遺伝子は神の領域であり、人間がこれに手を付けることは許されない」という神学的な反対や、「自然ではない遺伝子が入っているものなんか食べたくない」という感情的な反対である。これが世界的な運動に広がったきっかけは、企業の間違いにより起こったスターリンク事件だった。

(3)スターリンク事件

1998年に除草剤耐性だけでなく害虫抵抗性も持つGMトウモロコシ「スターリンク」がフランスのアベンティス社により開発された。すべてのGM作物は発売前に安全性と環境への影響について国の審査を受け、とくにアレルギーについては厳しく審査される。スターリンクはアレルギーに関するデータが不足していたため食用には許可にならず、飼料用として栽培が始まった。
ところが2000年に米国で、メキシコ料理のタコスの材料であるトウモロコシにスターリンクが混入していることを反GM団体が見つけた。輸送や貯蔵の過程で混入してしまったのだ。米国では何か問題があればすぐに訴訟になる。このニュースを聞いた消費者から、スターリンクを食べたため体調を崩したという訴えが続出し、中にはアレルギーを起こした人もいた。アレルギーとスターリンクの関連は医学的に否定されたが、2002年にアベンティス社はアレルギーを起こしたと訴えた3人に900万ドル(約10億円)を支払うことで和解した。こうしてGM作物はアレルギーを起こすという間違った情報が広がり、スターリンクは栽培停止と回収に追い込まれ、米国トウモロコシ関連業界は大混乱に陥った。そして、この問題をきっかけにしてGM作物に対する反対運動が世界的に大きく広がった。
日本ではスターリンクを承認していなかったが、輸入した飼料用トウモロコシにスターリンクが混入していることを反GM団体が見つけた。これについての政府の発表が遅れたため、「遺伝子組換えはアレルギーの原因」、「未承認遺伝子組換えが食品に混入」、「政府の情報隠し」などのセンセーショナルな新聞、テレビ報道が相次ぎ、恐怖が広がり、GM作物への反対が増えていった。

(4)ラウンドアップ潰し

スターリンクが消えた後に反GM団体のターゲットになったのがラウンドアップレディーだが、これは厳しい審査を経て承認されたもので、安全性に疑問を持たせる材料に乏しかった。そこで目をつけられたのがラウンドアップだった。これを潰せばラウンドアップレディーも潰せるだろうという目論見だ。そして、「ラウンドアップには発がん性がある」、「ラウンドアップレディーは危険」といった映画が次々作られた。主なものだけでも『ザ・フューチャー・オブ・フード』(2004)、『モンサントの不自然な食べもの』(2008)、『遺伝子組み換えルーレット-私たちの生命のギャンブル』(2012)、『パパ、遺伝子組換えってなぁに?』(2013)、『たねと私の旅』(2017)などがある。

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