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特集

ラウンドアップの風評を正す


IARCは2015年にラウンドアップをグループ2Aに分類した。主な根拠はラウンドアップが非ホジキンリンパ腫というがんを引き起こすかもしれないという論文だが、これはラウンドアップに発がん性はないというこれまでの多くの研究結果とは違う結論であり、世界の多くの研究機関が間違いを指摘した。たとえば、日本の食品安全委員会は2016年にラウンドアップに発がん性はないと判断し、IARCは科学的に価値が低い問題がある論文まで取り上げて結論を出しているが、食品安全委員会は国際的に合意された試験法に従って行なわれた信頼できる試験結果をもとにしたと述べている(※2)。ごく最近、米国環境保護庁もラウンドアップは健康に悪影響がないことを報告し(※3)、各国の専門機関も同様の評価をしている。その一覧はモンサント社のホームページに掲載されている(※4)。
IARCの評価結果を報道したメディアにも誤解があった。評価は発がん性の「根拠の強さ」に過ぎないことを十分に理解せず、実際に「がんを引き起こす強さ」と誤解した記事も見られ、その影響は大きかった。たとえば、IARCが本拠を置くフランスは2019年に果樹園等で用いるラウンドアッププロ360という製品を禁止した。さらに誤解は米国にも及んだ。

(6)カリフォルニア州の裁判

2018年にカリフォルニア州でラウンドアップを使用したため、非ホジキンリンパ腫になったという訴えがあった。裁判の争点はラウンドアップが発がん性を持つのかではなく、モンサント社がラウンドアップの危険性を使用者に十分伝えていたのかという点だった。モンサント社がIARCの分類を否定したこともあり、陪審員はモンサント社の責任を認め、懲罰的損害賠償を含む3億ドル(310億円)近い賠償を命じ、後に7800万ドル(約86億円)に減額した。
2019年にもカリフォルニア州で2件の裁判が行なわれ、ここではラウンドアップががんの原因であることを認めてモンサント社に1件は8000万ドル(約88億円)、もう1件は懲罰的損害賠償を含む約20億ドル(約2200億円)の賠償を命じた。評決は一般から選任された陪審員によるもので、原告の訴えやIARCの評価を見てラウンドアップに発がん性があると誤解をした結果と考えられる。モンサント社が上告したので判決は確定していない。
このような経緯を見ると、反GM団体の作戦が着々と成果を上げているように見える。モンサント社が「ラウンドアップは安全」という科学的に正しい主張をすればするほど反対派の反発は強くなる。人間の判断の背景には先入観があり、「ラウンドアップは危険」と信じている人にとってはモンサントの反論は虚偽に聞こえる。「科学的事実を見てほしい」と言われると「確証バイアス」という心理が働き、自分が信じていることを裏付ける情報ばかり探し、自分の考えとは違う情報はフェイクニュースと考えて無視する。こうして一度でき上がった先入観はますます強固になり、これを変えることは極めて難しい。すべての陪審員に正しい科学の知識を持ってもらうことは難しく、といって誤解を広げている風評を止めることも難しい。ラウンドアップをめぐる訴訟が1万件以上控えているといわれ、その行方は予断を許さない。

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