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1.限定的ではあるが、ヒトの疫学的調査結果からグリホサートの農業上暴露と非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin lymphoma)の発生との間に相関性がみられた。
2.動物実験において発がん性を示唆する所見がみられた。
3.農場に隣接する住民の血液検査において、グリホサート製剤散布後に染色体損傷を示唆する小核の増加がみられた。また、ヒト細胞を用いたinvitro試験においてDNA・染色体の損傷が観察された。
4.ヒト細胞を用いたinvitro試験及び動物実験において、グリホサートの原体、製剤及び代謝物に酸化ストレスを誘導する所見が観察された。

このIARCの発表(※1、2)を受けて米国EPA(US Environmental Protection Agency)をはじめ、関係各国の規制当局が再度今までに提出されたグリホサートの安全性試験データ及び関連文献を見直し、その安全性について以下の如く見解を述べている。
米国EPAは、グリホサートに関しては最初の登録時(1974年)以降15年ごとに提出されたGLP試験データを現代毒性学・毒性病理学を含む最新の科学的知見に照らし合わせ見直すとともに、上記のIARCの報告を考慮して実施された再評価結果(※3)を2017年に公表し、加えて2019年4月30日付の報告(※4)の中で「現時点ではグリホサートに発がん性は認められず、ラベル表示された方法に従い適正に使用する限り、ヒト及び環境に対し悪影響を及ぼすことはない」という見解を述べている。また、非ホジキンリンパ腫の発生を含む広範囲にわたる疫学的調査結果から、グリホサート暴露とヒトにおける発がんとの相関性はいずれの臓器・組織においても明らかではないとの認識を示している。EPAは他国の規制当局と同様に常に科学を基盤に農薬の安全性評価を実施しており、安全性をより完全なものにするため、不明な点があれば最新の科学的知見・手法に基づき明らかにしてゆく姿勢を今後も貫く所存であることを強調している。
欧州食品安全機関EFSA(European Food Safety Authority)の再評価(※5、6)では、提出された数多くのGLP長期発がん性試験結果及び関連文献からグリホサートには発がん性は認められず、ヒトに対しても発がん性は示さないものと判断され、EUにおける危険有害物質の分類法であるCLP規則(Regulation of classification, labelling and packaging of substances and mixtures)に従ってグリホサートを分類・表示する必要性はないと結論付けた。一方、IARCは前述の如くグリホサートをGroup 2Aに分類した根拠として、一部の長期発がん性試験の高用量群において腎尿細管腫瘍(雄マウス)、血管肉腫(雄マウス)、肝細胞腺腫(雄ラット)あるいは甲状腺C-細胞腺腫(雌ラット)の発生に増加傾向が見られたことを挙げているが、これらの変化には統計学的に有意差はなく、用量相関性に乏しく、腫瘍の発生部位・種類に一貫性がなく、発生も片性のみで頻度的に自然発生腫瘍の背景データ範囲内にあり、前腫瘍性病変も見られないことから、EFSAではグリホサート投与との因果関係はないものと解釈された。遺伝毒性に関しては、GLPに準拠して実施されたin vitro試験及び多数の公表論文において結果は陰性であったことから、EFSAではグリホサートには遺伝毒性はないと判断された。IARCが採択した一部の論文では、in vitro試験において染色体異常やDNA損傷が見られたと報告されているが、in vivo試験ではそのような異常を示唆する所見は観察されていない。また、酸化ストレスの増加に関してもメカニズムが不明瞭で確証が得られていない。なお、ヒトにおけるバイオモニタリング調査結果(※7)から、製剤を含むグリホサート暴露と酸化ストレスによるDNA損傷との因果関係はないものと報告されている。EFSAでは、IARCの指摘事項を考慮した上で、総合的に評価した結果において、グリホサートには遺伝毒性はないものと解釈された。なお、IARCが指摘したグリホサート製剤と非ホジキンリンパ腫との疫学的因果関係については、調査データが極めて限定的であり、結論付けるのに十分な証拠が得られていないという見解をEFSAは述べている。

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