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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第5回 自社畑拡大に積極的に取り組む「日本ワインはステータス」 サントリーワイン(東京都港区)
- 評論家 叶芳和
- 第25回 2019年05月31日
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1 日本ワインの統計的側面
ワイン産業論現地ルポも序盤を終え、ここら辺で、ワイン業界を鳥瞰すべく、若干の統計を整理しておきたい。ワイン全体に占める国産ブドウ100%の「日本ワイン」の比重は極めて小さく、また日本ワインの担い手は中小企業が多い。
表1に示すように、日本で流通するワインは38万キロリットル、うち国内製造12万キロリットル、輸入26万キロリットルで、輸入ワインが約7割を占める(2017年)。また、国内製造ワインに占める日本ワイン以外(輸入原料依存)は80%であるから(10万キロリットル)、輸入由来が36万キロリットルであり、全体の94%を占める。国産ブドウ100%で造る「日本ワイン」は全流通ワインのわずか6%である。
ただし、「日本ワイン」はまだ少ないが、伸び率は一番大きく、近年、国内製造ワインが緩やかに伸びているのも日本ワインの寄与である(課税実数の伸びよりも、ワイン用ブドウ仕向け量の伸びが大きいことから推論できる)。
表2は、国内製造ワインの規模別生産量である。企業規模は中小企業が圧倒的に多い。100キロリットル規模(720ミリリットル約10万本)以下が全体の8割を占める。一方、生産量は1000キロリットル規模(約140万本)以上の企業が8割以上を占める。輸入原料の国産ワインに限ると1000キロリットル規模以上が95%を占める。つまり、国産ワインはサントリー、マンズワイン、メルシャンなど大手資本によって供給されている。
一方、国産ブドウ100%の日本ワインは、1000キロリットル規模以上の大手のシェアは34%に過ぎない。逆に、300キロリットル(約40万本)以下の中小企業のシェアが43%を占める。つまり、中小ワインメーカーは「日本ワイン」しか造っていないと言って過言ではない(表2下段参照)。山梨県勝沼地区のワイナリー群はここに属する。
表3は、原料事情を見たものである。国産原料(生ブドウ)の割合は25%、輸入原料(濃縮果汁)が75%を占める。国産原料を品種別にみると、白ワイン用の甲州、ナイアガラ、赤ワイン用のマスカットベーリーA、コンコードが多い。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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