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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第5回 自社畑拡大に積極的に取り組む「日本ワインはステータス」 サントリーワイン(東京都港区)


予想される国産ワインの競争力低下への対応
サントリーワインインターナショナル(株)は、日本のワイン業界の最大手である。2018年の販売実績は日本ワイン6万ケース、輸入濃縮果汁から造る国産カジュアルワイン403万ケース、このほか輸入ワイン233万ケースである。国産カジュアルが多く、数量ベースでは7割を占める(金額ベースでは1本720ミリリットル500円と安価であり売上の4割)。日本ワインは少なく、同社販売実績の0.9%に過ぎない(表4)。
ワイン業界全体と比較すると、日本のワイン市場の規模は38万キロリットル、うち国内製造ワイン12万キロリットルであるから、サントリーの全国シェアは国内製造ワインの場合27%を占める(2017年)という大変な寡占である。
しかし、国産ブドウ100%の日本ワインに限ってみると、サントリーのシェアは小さい。全国の日本ワイン約2.4万キロリットル(課税実数12.1万キロリットルの20%)に対し、サントリーの日本ワインは540キロリットルに過ぎず、全国比シェアは2.2%である(17年)。国産カジュアルのシェアは大きいが、日本ワインのシェアは小さい。
先に見たように、日本のワイン業界は、中小企業は国産ブドウを原料としているのに対し、大手は輸入原料に依存しながら発展してきた。最大手のサントリーはその典型であることが分かる。
これは、日本のワイン市場が急速に伸びたのに対し、ワイン醸造用ブドウの供給が不足したことが背景であろう。ワインメーカーは濃縮果汁を輸入してワイン造りを行ない、国内消費市場の拡大に対応してきた。コストも、国産ブドウより、輸入濃縮果汁のほうが圧倒的に安い。この間、輸入関税も高く、輸入ワインという製品での輸入を抑制し、国内メーカーを保護してきたのも事実だ。
しかし、日本経済のグローバリゼーションは進展した。保護主義的な高関税がいつまでも続くとは誰も期待できない。一方、同じ飲料業界の清酒では、アルコール添加の普通酒(昔の2級酒等)が減り、純米酒が伸びている。10~17年の7年間で、普通酒は22%減少、純米・純米吟醸酒は38%増加した。消費者の本物志向が強まっている。
日欧EPA協定に伴いワインの輸入関税は全廃された(19年2月発効)。輸入関税が撤廃されワインが安く輸入されるようになると、輸入濃縮果汁で造る国産ワインと競合する。国産ワインの競争力低下も予想できる。数年前から、こうした展望は強まっていた。

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