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スマート・テロワール通信

スマート・テロワール協会、総会を初開催

スマート・テロワール協会は4月12日、初となる総会を都内で開催した。現在、山形と長野で実証実験に携わっている関係者をはじめ、約50人が一堂に会した。ゲストに環境省大臣官房環境計画課計画官の中島恵理氏、スマート・テロワールの提唱者である故松尾雅彦氏が社長を務めたカルビーから伊藤秀二社長、ご子息の松尾東彦氏、姪御さんで日本で最も美しい村連合で副会長を務める二宮かおる氏を迎えた。
司会は松尾氏と親交があった広島経済大学経済学部の川村健一名誉教授が務めた。また、『里山資本主義』の著者、藻谷浩介氏より「松尾雅彦先生と農村の経済成長」という書面が提供された。

協会の三つのミッション

会長の中田康雄は、総会を開催した趣旨を次のように述べた。
「松尾さんが逝去してから1年経った。私は、病床で遺言のように『協会をよろしく頼む』と託された。遺志を継いでいくためにも、あらためて組織を固め、スマート・テロワールの活動を支えてくれる会員を募ろうと考えた。今日集まっていただいた皆さんには、是非中心となって協力いただきたい」
また、協会のミッションとして、次の三つを発表した。一つめは現在進行中の山形と長野の実証実験を支援していくこと。二つめは各地のスマート・テロワール構築活動に対する支援をしていくこと。三つめは地元産の原料で地元の加工業者が加工品を開発し、地元の小売店で販売する場合、スマート・テロワール商品を認定する仕組みづくりをすることである。

理論の起源から実践まで

カルビーの伊藤社長は、松尾氏がカルビー社長時代に始めた農工一体のための取り組みに触れ、そのことがスマート・テロワールに通じていることから、今後、何らかの形で活動に関わっていきたいと挨拶した。
環境省の中島氏は3月まで長野県の副知事を務めた人物である。長野県の地消地産を推進する際、松尾氏をはじめスマート・テロワールの関係者と連携してきた。この日は基調講演として、環境省と長野県の取り組みを発表した。
「環境省では、現在の日本社会が抱えている課題は、『統合的に』取り組む必要があると考えてきた。この考え方は2015年に国連で採択された持続可能のための開発目標SDGsとも通じる。そこで、18年に成立した環境基本計画では、日本が目指す社会の姿として『地域循環共生圏』を掲げた。食の地消地産をしたり、再生可能エネルギーや資源を地域で循環させたりすることによって、地域が物質循環をしながら共生をする自立的な社会をつくり、ひいては生物多様性や地球温暖化防止にもつなげていくというものだ」
中島氏は、長野県で取り組んできた地域経済循環のキーワード「地消地産」は、スマート・テロワールの概念とほぼ同じだと考えている。今後、国のSDGs未来都市にも選定されたという長野県での取り組みを踏まえ、環境省の地域循環共生圏に取り組んでいくと述べた。
スマート・テロワールの構想は、中島氏を通じて国の政策にも生かされ、各地に広まっていくことだろう。
続いて、『スマート・テロワール』の共著者である浅川芳裕氏より、山口市で展開した農業改革(本誌4月号掲載)が報告された。これは、スマート・テロワールの理論を実践に移したものである。

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