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しかし、経営者の脳みそだけでなく、家族や従業員にも、研修や情報収集の機会を与えれば、それぞれの性格や能力に応じた情報収集やスキルアップが経営に良い効果をもたらすこともある。大きく期待すれば裏切られることもあるだろうし、農場を離れて新しいことに挑戦したいと願い出るケースも出てくるかもしれない。そのあたりはケースバイケースなので、答えはない。柔軟な対応が求められるところも踏まえて、家族や従業員の伸び代は、経営者の甲斐性次第でもあるのだろう。
予算を確保して、外の刺激を取り込みやすい経営環境に
農業界には、農協や自治体が呼びかけてくれる親睦をメインに据えた研修が多い。だが、厳しい競争社会のなかで生き残るべく、常に課題や命題を持って、チャレンジするためのヒントやアイディアを探している経営者にとっては、物足りないこともあるだろう。私は、違う作目の農業経営者、農業関連業界の人、さらには異業種の人たちとの交流によって得られた情報こそが、脳みその栄養になっていると自負している。
そうした情報を得るために必要なことは、二つある。まず、情報交換というくらいで、交換する情報を持っていないと、良い情報は得られないということだ。
ある大手企業の役員と懇談をしたときに、農業を営む自分の情報なんて大したことないという思いから、相手の会話に最初は注視ばかりしていた。ところが、誰しも食べ物には感心が高いようで、アスパラや和牛の業界ネタから思いのほか会話が弾み、結局アスパラの顧客になって頂いた。立場や業界が異なっても、人と人とが情報を交換するには、自分が手がけている仕事に真摯に向き合い、その範疇の情報や自分自身の考えをまとめているだけでも十分なのだと教えられた気がした。
二つ目は、研修・交際にかかる旅費・交通費あるいは接待交際費を含む費用のことである。基本的に、情報は自分の足で稼ぐものである。移動すれば当然ながら、旅費や交通費が発生する。付き合いの範囲が広ければ、接待交際費もかかる。はじめから予算を組んでおけば何かと円滑に物事が進むというのが私の考え方である。税法でも費用として正式に認められているのだから、重要度に合わせて、ケチらずに年間の収支計画に少し盛り込んでおくことをおすすめしたい。
また、近場に飲食店が減ってきた田舎であればなおのこと、事務所や敷地の一角に飲食・喫茶スペースを作っておけば、人が寄り、情報が集まるようになる。設置費用はかかるが、情報交換による費用対効果は意外と大きいと確信している。情報交換は日ごろのお付き合いをも楽しむこと。それこそがコツであろう。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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