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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
タイ 王室の支援を受けて産業化を目指す
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第18回 2019年05月31日
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モン族の民俗刺繍とヘンプ栽培を王室が支援
タイでヘンプといえば、北部の山岳地帯に住むモン族の独特な民俗刺繍の入った衣服、ハンモック、毛布などがよく知られている。モン族とは、東南アジアのラオス、ベトナム、タイ、中国南部などの山岳地帯に住む少数民族である。モン族のロングスカートは、ろうけつ染めされた黒と藍色の手織りのヘンプ生地に、赤や黄色、様々な柄の刺繍が施されているのが特徴だ(図1)。彼らが生み出すヘンプ生地を使った衣料品や小物は、フェアトレード(公正貿易)商品として日本でも流通している。
タイでは1943年(BE2486)に米国の大麻禁止政策の流れを受けて大麻法が施行された。79年
(BE2522)に他の薬物法と統合整理して施行された麻薬法では、大麻は第V類麻薬として位置づけられ、特別な許可がないと栽培ができなくなった。ただし、伝統的に衣類等に使ってきたモン族の営みはこうした規制から見逃されてきた。種子を播種して栽培するのは違法だが、山岳地帯に自生するヘンプを刈り取り、繊維を採るのは合法という解釈による。
05年にシリキット王妃殿下(現・王太后)がモン族を訪問して、保護育成が必要だと認識したことから、政府の経済開発を担う高地研究開発機関(HRDI)はモン族のヘンプ栽培を部分的に保護下に置いた。
タイには、王室が直接手がける
「ロイヤル・プロジェクト」がある。国内の農業・酪農・水産物などの技術の向上や普及を目的として、産業化を支援すると同時に、チトラダ宮殿の敷地内では農作物や加工品の生産や研究開発を行なっている。農作物の生産性を上げたいという国王の考えに基づいて運営され、山岳地帯の重要な経済作物としてヘンプも取り上げられたのだ。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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