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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

タイ 王室の支援を受けて産業化を目指す

タイ王国は、日本の約1.4倍の国土面積に約6500万人が暮らす仏教国である。経済発展が進む一方で、農家世帯人口は総人口の38%の約2510万人に及び、農業は基幹産業だ。主要農産物のうち、コメや天然ゴム、キャッサバ、エビ、チキンなどを輸出しているが、日本は最大の輸出先であり、農産物の輸出高の約10%前後を占めている。

モン族の民俗刺繍とヘンプ栽培を王室が支援

タイでヘンプといえば、北部の山岳地帯に住むモン族の独特な民俗刺繍の入った衣服、ハンモック、毛布などがよく知られている。モン族とは、東南アジアのラオス、ベトナム、タイ、中国南部などの山岳地帯に住む少数民族である。モン族のロングスカートは、ろうけつ染めされた黒と藍色の手織りのヘンプ生地に、赤や黄色、様々な柄の刺繍が施されているのが特徴だ(図1)。彼らが生み出すヘンプ生地を使った衣料品や小物は、フェアトレード(公正貿易)商品として日本でも流通している。
タイでは1943年(BE2486)に米国の大麻禁止政策の流れを受けて大麻法が施行された。79年
(BE2522)に他の薬物法と統合整理して施行された麻薬法では、大麻は第V類麻薬として位置づけられ、特別な許可がないと栽培ができなくなった。ただし、伝統的に衣類等に使ってきたモン族の営みはこうした規制から見逃されてきた。種子を播種して栽培するのは違法だが、山岳地帯に自生するヘンプを刈り取り、繊維を採るのは合法という解釈による。
05年にシリキット王妃殿下(現・王太后)がモン族を訪問して、保護育成が必要だと認識したことから、政府の経済開発を担う高地研究開発機関(HRDI)はモン族のヘンプ栽培を部分的に保護下に置いた。
タイには、王室が直接手がける
「ロイヤル・プロジェクト」がある。国内の農業・酪農・水産物などの技術の向上や普及を目的として、産業化を支援すると同時に、チトラダ宮殿の敷地内では農作物や加工品の生産や研究開発を行なっている。農作物の生産性を上げたいという国王の考えに基づいて運営され、山岳地帯の重要な経済作物としてヘンプも取り上げられたのだ。

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