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土門「辛」聞

ドローンはスマート農業の「旗手」たりえるのか

ドローンは英語で「雄バチ」のこと。ヘリコプターと同じ回転翼(ローター)が回転する際に出す「ブーン」という音に似ているので、そう呼ばれるようになった。ドローンの場合、複数のローターからなるマルチコプターと呼ぶこともある。モーターとバッテリーが動力源だ。

ドローンを開発した日本企業が逃した大魚

いまのようなドローンを最初に開発したのは、大阪の電子機器メーカー「キーエンス」。各種センサーや測定器などを製造していた。その技術を活かして角速度を検出するジャイロセンサーの特許を取得。そのセンサーを搭載した4つの回転翼で飛行する「室内用電動ラジコン円盤」をホビー向けに商品化したのが1980年代後半のことだった。
そのジャイロセンサーの特許が期限切れになるのを待っていた海外メーカーがあった。フランスの電子機器メーカー「パロット」だ。キーエンスのジャイロセンサーに改良を加えて高性能フライト・コントローラー(姿勢制御装置)を完成させた。2010年、それを搭載した「ARドローン」を市場に投入、ホビー向けでリバイバルさせた。スマートフォンの高機能化に着目してスマホ操作をセールスポイントにした。
これが爆発的にヒットした。スマホの電波帯なら、無線操縦するラジコン機と違い電波法の規制対象から外れて登録や免許など複雑な手続きが不要となる。その手軽さがユーザーに受けた。ユーザーから「スマホで操作して、モノが動き、飛ぶ、その動作に衝撃を受けた」という評価がいくつも寄せられたという。
その翌年、パロットはドローンにカメラを初搭載したホビー向け改良機を市場投入する。これも大ヒット。ユーザー評は「まるで空を飛びながら撮影しているみたい」。撮影を可能にしたことで、ドローンの利用領域を商業用へ拡げる糸口となった。ARドローンが売れたことでパロットはトップメーカーに躍り出た。
惜しいのは、キーエンスのその後の展開だ。ドローンの開発を中途半端にしてしまったことである。16年7月1日付け日経ビジネスは、革新的な技術を開発しながら商品化に失敗、日本企業が取り逃がした6つの「大魚」の1つと書いている。
キーエンスにとって不運だったのは、ジャイロセンサーの開発が四半世紀も早すぎたことだ。その後、ドローンを構成するコンピュータ、モーター、バッテリーの技術が急速に進展。その予測がついていたら、ホビー用で終わることはなかったのに、と思えてならない。

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